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虚ろな目 ページ14





それから1時間、だらだらお喋りして
22時ごろ ようやくお店を出た
外は真っ暗
昼より随分涼しくなってて、ちょうど風が通る駅のホームは 寒いくらいだった

…こんな夜に先輩とふたりでいると
色んなこと考えちゃう
また手繋がれたらどうしよう、って
期待半分
そんなわけないって、諦め半分

見上げた先輩の横顔は
綺麗で、でもなんか、儚くて
やっぱり好きだなって、ぼおっと考えてた


A「…今日、よかったあ、先輩のバイトなくなって。」

玲於「…うん、ラッキー。」

A「…ついてる、わたし。」

玲於「ついてる。」


先輩がそう呟いたとき
ちょうど電車が止まる
乗ろっかって一歩踏み出して
でも


A「……先輩?」


電車、もう出ちゃいそうなのに
先輩は一点を見つめたまま、動かない
え?って、その視線を追ったら

電車の中
スーツ姿の若い男性と
その隣に、サヤさんの横顔

息、止まりそうだった
だって先輩が前見た時も、サヤさんと一緒にいたの、スーツ姿の男の人だったって
てことは、あれが
先輩がこんなに苦しんでいるのに
サヤさんはあんな笑顔で、違う人と


A「…やっぱり、次の電車にしよう。」


先輩の腕掴んで、ベンチに引っ張った
見ないで
嫌だよ
わたしじゃ、埋められないのに

ぼおっとした様子の先輩は
力なくベンチに座って、電車が行ったあと ようやく顔を上げた


玲於「…ごめん。」

A「……ううん。」

玲於「……違う、ごめん。…べつに俺、サヤさんを…」

A「……。」

玲於「…サヤさんのこと 今でも好きとか…そういうのじゃなくて。」

A「…え?」

玲於「……A、あのさ。」

A「…はい。」

玲於「……ちょっとだけ、時間いい?」


虚ろな目でそう言った先輩
頷くと、ごめんってもう一度呟いたあと、口を開いた


玲於「…そんな、重い話じゃないよ。でも、お前にはなんか、聞いてもらいたくて。」

A「……うん。」

玲於「…俺ね、まあ、生まれた時から母子家庭なんだけど。…唯一の家族の母ちゃんに、愛情受けた記憶が あんまなくて。」

A「……。」

玲於「…べつに、虐待されてたとか、メシ貰えなかったとか、そんなんじゃないよ。実際大学通わせてもらってるし。でも、なんつーかさ…興味持って貰えてなかったっていうか、母ちゃんいっつも、俺といるのが息苦しそうだった。」


ひとつひとつ、言葉を選んで話してくれる
そんな先輩の横顔は
今までで一番、寂しそうだった


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maki(プロフ) - 今まで何お話、読み返したら、やっぱり佐野先輩とうまくいってほしい。。(;_;)先輩!!何してんのーー!!! (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9583ac788f (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - ほんとに今一番大好きな小説です。全然話長くしていただいてかまいません!笑更新これからも楽しみにしていますので大変だと思いますが頑張ってくださいね! (2018年7月5日 23時) (レス) id: cb039e5484 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - きなこさんは更新率が高いことだけが取り柄だなんて、全然まったくそんなことないですよ(^^)きなこさんのお話を読むだけで元気になれます。いつもお話を読めること本当に嬉しいです。これからも応援しています。きなこさんの思ったまま書いてください! (2018年7月5日 23時) (レス) id: 49103f1761 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - さいくぅー (2018年7月5日 22時) (レス) id: 527ff0df55 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - もうきなこさんの伏線が楽しみすぎます!!楽しみにしてます!! (2018年7月5日 22時) (レス) id: c6b1080ab1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2018年6月16日 21時

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