ファースト・ラブ (ページ2)

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中学の卒業記念に受けたオーディションはファイナリストまで駒を進めた。どうせ、書類審査で落ちると思って挑んだから周りの熱についていけず、自分だけ浮いていた。それを見抜かれたのかファイナリストにはなれたが、何の賞にもかすりもしなかった。

すごい悔しかった。周りの熱については行けなかったし、周りより熱はなかったかもだが、キラキラの世界に憧れ、なれるものならなりたかった。

私は結局ここまでなんだ、と考え気持ちを切り替えようと頑張ってる中、ある人から電話がかかってきた。

『私の事務所で女優目指してみない？』

初めは何を言ってるかさっぱりだったが、あのキラキラした世界にまた足を踏み入れられるならと思い、『はい』と返事をした。

そこからはトントン拍子で進んでいった。事務所に行き、養成所に入り、直ぐに事務所の先輩が出演するドラマに一緒に出演させて貰えた。結構重要な役でSNSで話題になり、一気に若年層に知名度が広がってた。仲の良い仕事仲間もできたし、初主演の映画も撮影した。

映画撮影中に来た話が朝ドラだった。事務所の先輩が主演を務める、知名度が上がってきてるなどの理由からオーディション無しで、娘役に指名された。

初出演ドラマだって、菅田くんがオーディションで一生懸命、出演を勝ち取った作品で、私はバーターとして出演した。今回の朝ドラもオーディション無しでバーターに変わりない。オーディションに参加したって落ちっぱなしの私はバーターとしてしかドラマに出演できないなんて悔しすぎて断るつもりだった。

だけど、断る気持ちを見透かしたように菅田くんは私にこういった。

『今回の役、前回演じたのとは全然ちゃうやん。それを演じて本城Aはこんな凄いんやでって見てもらえばええやん。』
『そしたらバーターとしてでは無く、個人で指名があるし、オーディションだって受かるようになる』

『何事もやってみればええんや』

アハハハ、って口を開きながら笑った。

何事もやってみればええんや

この言葉が私に魔法をかけた。

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