秋が来る ページ47
Aside
「ケンチンおんぶー」
「馬鹿か。自分で歩け」
辺りはすっかり暗くなり、遊園地もイルミネーションで豪華にライトアップされる。閉園の時間も近づき、私たちは最後に観覧車に乗ることにした。やはり遊園地の定番であり、締めは観覧車だ。最初は四人で乗ろうとしたのだが、マイキーがむりやりエマとケンちゃんの二人きりにさせた。強引にも程があるけど、まぁいいか。私とマイキーも、その後に来たゴンドラに乗る。
『遊園地、久しぶりだったから凄い楽しかった』
「そうだな、俺も最後に来たのは兄貴とだったから」
『…もう、二年も経つんだね』
そこで私は、当時チリチリパーマだった彼の事を思い出す。確か、もう出所していた気がする。マイキーはその事知ってるのだろうか。そんな事を思いながら、少しずつ上がるゴンドラの窓から外を見渡した。上から見る園内は、イルミネーションでとても綺麗だった。すると、マイキーは私の名を呼ぶ。視線を彼に移すと、バッチリと目が合い、ドキリと胸が鳴る。
「アイツ、出所したんだって」
『…そっか』
話の内容は、まさに私が今考えていた事そのものだった。マイキーの言う“アイツ”とは、東京卍會創立メンバーでもある羽宮一虎の事である。数年前に罪を犯し、少年院に入れられていた。その彼が、出所したみたいだ。
少し素っ気なく返事を返すと、そこでちょうどゴンドラが頂上に到達したのか、マイキーは何事も無かったかのようにはしゃぎ出した。やっぱり彼はまだまだ子供っぽい所がたくさんあると思う。しかし、その態度が“もうその話をするな”と遠回しに言われているようでならなかった。
(マイキー、やっぱり一虎の事…)
その後は、いつものように他愛の無い話ばかりしてゴンドラを降りた。
園内を出ると、同時に少し肌寒い風が靡く。バイクを止めている駐車場まで歩いていると、ヒラリと一枚の紅葉がどこからか落ちてきた。私はそれを拾い、ジッと見つめる。後ろからエマがひょこっと現れてその紅葉を一緒に見る。
「もう十月かぁ。早いね」
『…そうだね、もう秋だ』
私は、その紅葉を再び風に乗せ、遠くまで飛んでいくのを見送った。
『…』
秋が来る。
紅葉の秋が来る。
スポーツの秋が来る。
芸術の秋が来る。
食欲の秋が来る。
そして、人生で一番残酷な秋が来る。
to be continued__________.
1197人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひめ☆そら(プロフ) - かかさん» そう言って頂き光栄です!ありがとうございます! (2021年7月9日 13時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
かか - 更新楽しみです!無理せず頑張ってください! (2021年7月9日 6時) (レス) id: b7e78c6068 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - 雪見大福さん» ありがとうございます!!無理せず頑張りたいと思います! (2021年6月6日 13時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください (2021年6月6日 11時) (レス) id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ