【佐野万次郎】幻の副総長

海へ行こう ページ5

Aside







「A、海行こう」







土曜日のちょうど十一時を回った頃、部屋で少女漫画を読んでいた私を誘いに来たマイキー。







『後ろ乗せてくれるの？』

「当たり前じゃん」

『やった！飴ちゃんたくさん持ってくね』

「外で待ってるから早くしろよ」







去年の今頃にバイクで軽く衝突事故を起こした私は、一年ほど乗るのを禁止されていた。私の可愛い可愛いバイクちゃんは八月までお預けだ。



マイキーが外に出てから、私は部屋着から外出用の服に着替える。対して露出度は変わらないが、まぁいいだろう。鞄にはたくさんのチュッパチャプスを入れ、階段を降りる。リビングにいるであろう父に声を掛けてから、私は外へ出た。







「そういえば、今日は三つ編みじゃないんだね」

『あの三つ編みはケンちゃんしか出来ないの』

「へ〜。今度俺もやってみていい？」

『やだ。マイキー絶対下手だもん』







私は、マイキーが乗ってるバイクの後ろに乗り、手は彼の腰にこれでもかってくらい強くギュッと回す。







「ちょっと痛い」

『わざとだもん』

「早く緩めて」







「ちぇ〜」なんて言いながらも、少し力を緩める。その瞬間にバイクは走り出し、驚きのあまり心臓が飛び出るかと思った。



バシッと頭を叩くと、マイキーは「仕返し」って言って笑った。

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