【佐野万次郎】幻の副総長

こんにちはおばあちゃん ページ19

Aside







それは、ある日の放課後の事だった。







「ちょいとそこのお嬢ちゃん」

『私？』

「そうそう、少し道を尋ねたいんじゃが」

『いいよおばあちゃん。どこ行きたいの？』







駅前の広場で適当にフラフラと散歩をしていると、風呂敷を抱えた明らかに田舎から来たであろう老人が、私に道を尋ねて来た。







「武蔵神社っていう所に行きたいんじゃが」

『武蔵神社…』







武蔵神社。そこは東卍の集会場でもあり、先日私たちが花火を見た場所でもある。


そういえば、今日は集会があるって朝マイキーが言ってたような気がする。このおばあちゃん一人で行かせるのは危ないかもしれない。まぁ、東卍はそんなグループではないと思うが。







『おばあちゃん、ここから武蔵神社って遠いし口じゃ説明難しいから、一緒に行こっか』

「本当かい？優しい子だねぇ。ありがとう」







私はおばあちゃんから風呂敷を預かり、歩数を合わせて歩き始めた。このペースだと神社に着くのは本当に集会時間と重なるだろう。







『おばあちゃんは何で武蔵神社に行きたいの？』

「若い頃はこの近辺に住んでてねぇ、よ〜く遊びに行ってたもんさぁ」

『確かに武蔵神社の木って登りやすいもんね』

「おや、よく知ってるね。お嬢ちゃんも遊んだことあるのかい？」

『私も、昔はよく遊んでたから』







おばあちゃんにとっての“昔”と私にとっての“昔”は、勿論歴が、長さが違う。けど、こうして時を超えて共通の話が出来るのはとても凄いことなんだな、と、おばあちゃんと話をしていて私は思ったのだった。

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