The duet never ends!【ONEPIECE】 (ページ5)

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陽だまりページ5

ある一軒家、Aの部屋から愉快なピアノの旋律が聞こえてきた。その音色に彼の今は亡き仲間の声が色を添え、ひとりまたひとりと声が消えていくのをAはただ聞いていた。

「いい唄ですね」
「ええ海賊なら誰でも知っている『ビンクスの酒』。私は訳あってルンバー海賊団の船長をやっていた時期がありました。その時船は敵の毒を仕込んだ攻撃で全滅。その前に岬へ置いてきた仲間へ歌声を届けようとこのトーンダイヤルに録音したんです」

ブルックは大事そうにトーンダイヤルを頭蓋骨の中へしまうとAに目を向けた。

「そういえば先生をやっていたんですよね?」
「え?ええそうですが」
「ならぜひAさんの曲お聞きしたい！」

さあさあどうぞ、と椅子から退くとAは言われるままに座らされた。何故か立場が逆転している気がしたがAはそっと鍵盤に触れた。しかしやはり指は鍵盤をすり抜けてしまった。

「あっ、そうかゴーストだから触れられないんですね！」

今さらなことにブルックは愕然とした。
しかしAは微笑んでいた。

「Aさん?」
「すごく久しぶりにピアノに触れて、素敵な曲も聞けて......今日は本当にあなたに会えてよかった」
「あ、私もその気持ち分かりますよ」

何故か顔が熱くなるのを感じながらブルックは少しAから無い目を逸らした。
(何なんでしょうこの感覚は)
無いはずなのに胸のあたりがドキドキするような感覚を覚えてそっと胸に手をあてた。

「私も少し前に心からそう思える出来事がありまして。そうだ、Aさん、この部屋に楽譜は?」
「えっと、たしかあそこに」

Aが指さした窓際のつくえの中に何枚もの楽譜とインクペンが転がっていた。そのうちの小さな楽譜を一枚手に取った。

「それは私が作った曲です。簡単なものですけど」

『陽だまり』と名付けられた譜面を指でなぞる。それは彼女の性格を表すかのように軽やかで優しく、小鳥が歌うようだった。粗野っぽさのある自分の曲とはまた違う世界にたった一つの曲だ。
不意に鼻歌が聞こえてきた。いつの間にか彼のそばに移動していた彼女が『陽だまり』の鼻歌を歌っていた。

「あなたのように素敵な曲ですねえ」
「ありがとうございます。作った中でも一番お気に入りなんです。これを弾いてると子供たちがやって来て静かに聴き入ってて＿＿幸せなひとときでした」

ブルックは再びピアノの椅子に座ると『陽だまり』を弾き始めた。