それは突然に ページ1
ドシン!と大きな音が建物に響き渡った。
屋根には大きな穴があき、うっすらと光が差し込んだ。
「あいたたた......」
むくり、と煙の中でひょろ長い影が起き上がった。Aは物陰に隠れてひたすら様子を伺っていた。
「あー、ここは一体どこなんでしょう?参りましたねえ......」
煙が晴れるとそこにはアフロでぼろを纏った白骨死体が喋っていた。
「っ〜!!」
Aは言葉にならない声を上げ意識を失った。
「＿＿ん、お嬢さん」
「......ん?」
何者かに呼ばれて目が覚めた。
画面いっぱいに動くガイコツがいた。
「お嬢さん、大丈夫ですk」
「きゃああああああああ!」
「ぎゃああああああああ!」
二人の悲鳴が建物にめいいっぱい木霊した。
「はあ、はあ、はあ、あ、あの、オ、オバケ」
「違うんです！私オバケじゃありません！」
目の前のガイコツはバタバタと手を振り、そして一度立ち上がると恭しくお辞儀した。
「わたくし、"死んで骨だけ"ブルックです!」
ヨホホホホ!と声高く笑うもののAには未だにオバケにしか見えなかった。
「あ!あのー、ところでお嬢さん」
「ん?」
「パンツ、見せてもらってもよろしいですか?」
Aは一瞬思考停止した。
「はああああ!?ダメに決まってるでしょう!」
「ヨホホホホ!非常に手厳シィー!」
何なんだこのガイコツは、とAは面食らった。しかしブルックは急に真面目にたずねてきた。
「ところで、ここはどこなんでしょう?」
「......ここはヒツギ島(とう)。小さな冬島です」
「ええ!?」
ブルックはバタバタと慌て始めた。
「そんな!何故?私は船で寝てたはずなんですが」
「どうやってきたのか覚えてないんですか?」
「いやー、覚えてないも何も船で昼寝して夢を見ていたのですが......」
そう呟く彼の表情はどんどん曇っいった。
「どうかしました?」
「いえ!なんでもありませんよ。今は独りじゃないことは確かですから!」
ブルックは再び明るく笑うとせっかくだからと一曲披露した。海賊で音楽家な彼が奏でる楽しげなリズムにAは久しぶりに心が踊った。
「さあ!あなたもご一緒にいかがですか」
ブルックはAを屋根から差す陽のもとへと誘う。
Aは首を横に振った。その反応に音楽はピタリと止んでしまった。急に訪れた静寂が耳に痛い。
「何か事情があるようですね?」
私は小さく頷いた。
「私に何かできることは?」
私は再び首を振った。
「じゃあ、せめて名前だけでも」
「私はA」
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作者名：アナログ2号 | 作成日時：2020年3月29日 0時
