純白の天使 (ページ34)

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34話ページ34

「パパ」

「どうした？」

抱えられたレイは言う。

「パパ、食べても良いから捨てないで…」

それは幼き子も叫び声でもあった。

「食べないし、捨てない。」

それをなくすかのような優しげな声が返ってくる。

「本当に？」

「本当だ。嘘は言わない。」

「本当に本当？」

「本当に本当だ。」

レイは言う。
言える筈もなかった不安を。
我慢していた言葉の数々を。

「また、お勉強出来る？」

「嗚呼、出来るゾ」

「お茶会も？一緒にご飯を食べるのも？」

レイが聞く都度、グルッペンは優しく答えた。
赤いルビーは潤い始め、それは雫となり流れ落ちる。

「ずっと一緒にいられるの？」

「嗚呼、お前が大人になってもずっと一緒だ。」

とめどなく溢れる雫をグルッペンは拭き取る。
レイの真っ赤な瞳と目を合わせる。

「レイ、お前は俺の娘だ。これから色々な事があるかも知れない。常に命を狙われ続ける。」

レイは黙って聞く。

「それでも、一緒に居てくれるか？」

父と同じ人間として育てられた男。
食料として育てられた幼女。

それは決して一言では片付けられない過去。

レイは笑う。
あの時のように。
天使のような笑みで、舌ったらずなあの声で言った。

「うん！ずっと一緒にいる！！」