純白の天使 (ページ32)

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32話ページ32

「嗚呼…！僕の可愛い可愛い天使…君を食べると思うと滾(たぎ)ってしまうよ…！」

真っ黒なお部屋に真っ白い丸を書いたよく分かんない絵。周りには見た事のない衣装を着た人達。

「神の子を天へ返しましょう。貴方がここに居ては穢れてしまう。」

神の子ってなに？
けがれるってなに？
私は今から食べられるの？

ママやパパやお兄ちゃんやお姉ちゃんみたいに食べられるの？

「怖がらなくても大丈夫だ。君は帰るべき場所へ帰るんだ…！」

帰るって、エミール先生がいる図書室に？
帰るって、まんちゃがお茶会をしているテラスに？
帰るって、げどまるのいるお庭に？
帰るって、しょぴさんの猫さんが集まる裏庭に？

帰るって、パパ…

けど、パパは私を捨てちゃった。
本当はパパも怖い思いをしているだけ。
わかんない。
わかんない。

みんな…ここに居ない。
どこにも居ない。
1人ぼっち。

あの時と一緒。

「ぱぱ…こわいよ…どこにいったの…」

涙がポロポロと溢れて止まらない。
良い子にするから捨てないで。
お作法もお勉強もちゃんとするから私を食べないで。

お願いだから私を売らないで、パパ。
目の前のお兄さんが怖いよ。
周りの人達が怖いよ。
食べられちゃうよ。
あの痛みが、義手の傷が、義足の傷が痛い。
傷が痛いよ。
血がでてるよ。
なにもみえないよ。

「ぱぱ…みえない…みえないよぉ…！」

「さぁ、もっと鳴くんだ。鳴いて、鳴いて、鳴いて鳴いて鳴いて鳴いて鳴いて…！力をもっと沢山…！僕に幸運を、授けてくれたまえ！」

「神の子よ。父や母である者の名を叫ぶのです。」

分からない。
分かんない。
聞きたくない。

パパの声が聞きたい。
とんの声が聞きたい。
うつさんの声が聞きたい。
ぞみゅさんの声が聞きたい。

チーニョさんの顔が見たい。
ロポロの顔が見たい。
シャアちゃんの顔が見たい。
先生の顔が見たい。

みんなに…会いたい。
食べられても良いから。
閉じ込められても良いから。

一緒に遊びたい。
お話ししたい。
お勉強したい。
悪戯したい。

「ぱぱぁ！ぱぱぁ！」

「運命の時だ！僕の力となり恥肉になってくれ！！」

狂った男の声と、幼女の懇願の声が木霊する。
民族衣装の呪術師が大きく血濡れた鉈を振り被った瞬間ドアがけたたましく開いた。

「総員撃てっ！！」

聞き覚えのあるバトリンボイス。
幼女は宝石を流したまま声の主の方向を見た。
幼女の瞳は光を取り戻し、美しいルビーの目で名を呼んだ。