第３９話 ページ42
第３９話
それから私は焦凍さんの包帯を取り替えるのを手伝い、少しだけ…いつもはしないような話をした。部屋の壁に並んでもたれかかって座り「なんでも聞いてくれ」と言う焦凍さんの言葉に甘え、気になっていたことを聞いていく。
普段どんな風に仕事をしているのかとか、どんな個性を持っているのかとか。
でも一番衝撃的だったのは、焦凍さんが自分からしてくれた話。顔の左側にある火傷のこと。
前に焦凍さんが私と似た人物を知っていると言っていたけど、それは自分の事だったから…自分と私を重ねてしまい、余計に同情したんだと。
「………そう、だったんですね」
「話すのが遅くなって…悪かった」
「いえ…そんな大事な事、私なんかに教えてくれてありがとうございます」
驚かなかったと言えば嘘になる。
昔の焦凍さんの事を思うと胸が痛くなった。
でも、彼からそれを話してくれた事が少し嬉しくて…ちゃんと彼の心が救われた事実がある事が嬉しくて、私は自分の胸元をギュッと握った。
「……やっぱり焦凍さんは凄いですね」
「え…？」
「こんなに誰かを思って暖かい気持ちになれたのは、あなたが人の暖かさを教えてくれたからです」
例えいつか捨てられるのだとしても。
きっとこの気持ちは忘れられないだろう。
「だからあの日。手を差し伸べてくれたのが…私を拾ってくれたのが、あなたでよかったと…そう、思えます」
「っ……」
自然と頬が緩み私がそう言うと、横に座る焦凍さんが私の肩に手を回しグッと自分の方へ引き寄せる。驚きながら彼の方を見ると、すぐ近くに顔があって少し緊張した。
なぜか目を細め険しい顔をする焦凍さんに「あの、焦凍さん？」と首を傾げると彼はゆっくり口を開く。
「何だろうな…この気持ち。嬉しいのは確かだけど、そんな言葉じゃ言い表せねぇ様な…妙な気分だ」
「……なんか、難しいですね」
「けど…今はお前とこうしたいって思った」
そう言ってギュッと腕に力を込めた焦凍さんに、私は少し緊張するけどそれ以上に暖かい気持ちになれたから「そう、ですか…」と微笑む。
「夏祭り、来年はちゃんと行こう」
「…来年？」
「お前がこの家を出ていく日が来ても、お前さえ良ければまた俺と関わって欲しい。だから今年出来なかった事は…来年、やろう」
「っ、はい…」
ああ、いつ捨てられてもいいって思ってたのに
この人に捨てられるのが、縁を切られるのが
……少し、怖い。
．
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なんだよたけしビビってんのか(プロフ) - 全作品絵が本当に美しくて初めて絵で感動しました。また伏線が所々あってその上感動するなんて天才... (2021年5月23日 2時) (
レス) id: dfdea40777 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - タイトルの絵もなんかアニメ「ＰＳＹＣＨＯ-PATH」に絵柄が似てて感動。しかも、物語にもなんか感動した。 (2019年9月14日 0時) (レス) id: 2712192e09 (このIDを非表示/違反報告)
るみ - 終わり方最高です……！泣いた (2019年4月13日 21時) (レス) id: 4ab93c79dc (このIDを非表示/違反報告)
ﾌｧｱｱｱｱ(プロフ) - 絵がちょくちょく入ってくることによりなんか映画のワンシーンでも見ている気になりますね (2018年9月8日 15時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
トミ - すごく吸い込まれるようなお話で…次を読むのが楽しいです。 (2018年6月30日 23時) (レス) id: 3237980cf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月29日 17時
