第１２話 ページ14
第１２話
「え、と……いってきます」
「相変わらずぎこちない挨拶だな。そろそろ言い慣れてもいいんじゃねぇか？」
「……すみません」
「ふっ、冗談だ。ゆっくり慣れればいい」
行ってらっしゃい、と焦凍さんに頭を撫でられ私は少し俯きながら頷き家を出た。
焦凍さんの家で暮らし始めて今日で丁度１週間が経とうとしている。焦凍さんが仕事へ行く時間よりも私が学校へ行く時間の方が早く、先に家を出るから『いってきます』と言わなきゃいけないんだけど。
誰かに面と向かって『いってきます』と言う機会がなかったから、どうしても慣れなくてぎこちなくなってしまう。
その度に焦凍さんは呆れたように微笑んでまた頭を撫でてくれた。暖かくて、優しい手だ。
「……はぁ」
家を出て駅に向かいながら短い溜息を吐く。洗濯も料理も焦凍さんがするから、結局私は何も出来ていない。それに焦凍さんって料理上手だし、下手に私が作らない方がいいんだろう。
あの人より上手く作れる自信ないし。
前の家だとテレビが壊れてて見てなかったけど、焦凍さんの家のリビングで流れるテレビに『人気実力派若手ヒーロー！！ショートに密着！！』とニュースで焦凍さんが出てた。
やっぱり凄い人だったんだな。実力もあって、若い世代からお年寄りまで幅広い人気があるらしい。特に私と同世代の女性ファンが多いんだとか。
「ぁ……」
ふと顔を上げれば街のポスターにも焦凍さんがいた。知らなかったから今まで気にしたことなかったけど、こうして見ると焦凍さんがいかに有名人か分かる。
少し離れた女子高生２人組が「ねえねえ、ヒーローなら誰推し？」「やっぱりショートでしょ！！」と騒いでいた。凄い人に拾われちゃったな……私。
その時、ふと誰かの視線を感じた。
ああ…まただ。
焦凍さんの家に暮らし始めて１週間。ここ最近、外に出るといつも誰かの視線を感じる。最初は気のせいだと思ったけど…これは気のせいじゃなさそう。
相手の姿は見たことがない。でも、明らかに誰か私をつけている。また私の個性が見知らぬ誰かに感染してしまったという事だろうか。
だとしても焦凍さんには言えないな。
ただでさえ仕事が忙しく、家に帰れば私の面倒をみなきゃいけない。これ以上迷惑をかける訳にはいかないし。
それに私はこういう事になれている。
私の個性は周りの人間を無差別にサイコパスにするから、面倒事に巻き込まれるのは慣れているのだ。
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なんだよたけしビビってんのか(プロフ) - 全作品絵が本当に美しくて初めて絵で感動しました。また伏線が所々あってその上感動するなんて天才... (2021年5月23日 2時) (
レス) id: dfdea40777 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - タイトルの絵もなんかアニメ「ＰＳＹＣＨＯ-PATH」に絵柄が似てて感動。しかも、物語にもなんか感動した。 (2019年9月14日 0時) (レス) id: 2712192e09 (このIDを非表示/違反報告)
るみ - 終わり方最高です……！泣いた (2019年4月13日 21時) (レス) id: 4ab93c79dc (このIDを非表示/違反報告)
ﾌｧｱｱｱｱ(プロフ) - 絵がちょくちょく入ってくることによりなんか映画のワンシーンでも見ている気になりますね (2018年9月8日 15時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
トミ - すごく吸い込まれるようなお話で…次を読むのが楽しいです。 (2018年6月30日 23時) (レス) id: 3237980cf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月29日 17時
