検索窓
今日:51 hit、昨日:19 hit、合計:1,006,134 hit

第9話 ページ11

第9話



「えっと、爆豪さん…ありがとうございました」

「あ?…チッ、じゃあな」



荷物をキャリーバッグにまとめ家の前で爆豪さんに頭を下げると、爆豪さんは面倒臭そうに頭をかいて帰っていった。

「じゃあ…俺らも行くか」と轟さんに連れられ、私は長年住んできた家に心の中で別れを告げる。



数十分電車に揺られ、駅から降りて少し歩くと真新しい日本家屋が見えてきた。どうやらここが轟さんの家らしく、まだ20歳なのに一軒家なんて凄い。

私はヒーローに興味がないから知らなかったけど、もしかして轟さんって凄いヒーローなのかな…。



「改めて、今日から1年間よろしくな」

「あ…はい。よろしくお願いします、轟さん」

「その轟さんっていうのやめねぇか?同じ屋根の下で暮らすのに他人行儀だろ」

「……えっと、じゃあ、焦凍さん」

「ああ、A」



名前で呼ばれるなんてお母さんに数年前呼ばれて以来だ。本当に、家族のように接してくれるんだな。なんだか兄ができたような…でも父親のような、少し歪な関係。

養子になった訳じゃないから、ただ1年間この家に住まわせてもらう只の居候なんだけど。



「他に足りねぇモノとかあれば遠慮なく言ってくれ。ある程度のモノなら不自由なく買ってやれる…と思うから」

「は、はい…」

「……緊張してるのか?」



私の顔を覗き込み焦凍さんが首を傾げる。新しい環境に緊張していないと言えば嘘になるけど、それよりも困惑の方が大きかった。

私はこの家で何をするべきなんだろう。流石に家事ひとつせず住まわせてもらう訳にはいかないし、かといって勝手に色々触っていいのか…。

とにかく私は、彼に不快な思いをさせないようにしないと。



「……いえ、何でもないです」

「…………………」



ふにっ


私が俯いて答えると、焦凍さんが無言で私の頬を両手で包みふにふにとする。訳が分からなくて「っ、?」と困惑する私に、彼は口を開いた。



「俺はエスパーじゃねぇし、多分他のやつより人の考えてる事とかに鈍い方だと思う…自分で言うのも何だけどな」

「え…?」

「だから、言ってくれなきゃ分かんねぇ。お前って何か頭の中では色々考えてるタイプなんだろ。俺の知り合いで緑谷っていう似たような奴がいるから、なんとなくソレは分かる。今のお前…考え事してる時の顔だった」

「あ、あの…」

「俺はちゃんと、お前の気持ちを知りてぇんだ」



第10話→←第8話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (888 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1525人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

なんだよたけしビビってんのか(プロフ) - 全作品絵が本当に美しくて初めて絵で感動しました。また伏線が所々あってその上感動するなんて天才... (2021年5月23日 2時) (レス) id: dfdea40777 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - タイトルの絵もなんかアニメ「PSYCHO-PATH」に絵柄が似てて感動。しかも、物語にもなんか感動した。 (2019年9月14日 0時) (レス) id: 2712192e09 (このIDを非表示/違反報告)
るみ - 終わり方最高です……!泣いた (2019年4月13日 21時) (レス) id: 4ab93c79dc (このIDを非表示/違反報告)
ファアアアア(プロフ) - 絵がちょくちょく入ってくることによりなんか映画のワンシーンでも見ている気になりますね (2018年9月8日 15時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
トミ - すごく吸い込まれるようなお話で…次を読むのが楽しいです。 (2018年6月30日 23時) (レス) id: 3237980cf6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:NAOKI | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/  
作成日時:2018年5月29日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。