第9話 ページ11
第9話
「えっと、爆豪さん…ありがとうございました」
「あ?…チッ、じゃあな」
荷物をキャリーバッグにまとめ家の前で爆豪さんに頭を下げると、爆豪さんは面倒臭そうに頭をかいて帰っていった。
「じゃあ…俺らも行くか」と轟さんに連れられ、私は長年住んできた家に心の中で別れを告げる。
数十分電車に揺られ、駅から降りて少し歩くと真新しい日本家屋が見えてきた。どうやらここが轟さんの家らしく、まだ20歳なのに一軒家なんて凄い。
私はヒーローに興味がないから知らなかったけど、もしかして轟さんって凄いヒーローなのかな…。
「改めて、今日から1年間よろしくな」
「あ…はい。よろしくお願いします、轟さん」
「その轟さんっていうのやめねぇか?同じ屋根の下で暮らすのに他人行儀だろ」
「……えっと、じゃあ、焦凍さん」
「ああ、A」
名前で呼ばれるなんてお母さんに数年前呼ばれて以来だ。本当に、家族のように接してくれるんだな。なんだか兄ができたような…でも父親のような、少し歪な関係。
養子になった訳じゃないから、ただ1年間この家に住まわせてもらう只の居候なんだけど。
「他に足りねぇモノとかあれば遠慮なく言ってくれ。ある程度のモノなら不自由なく買ってやれる…と思うから」
「は、はい…」
「……緊張してるのか?」
私の顔を覗き込み焦凍さんが首を傾げる。新しい環境に緊張していないと言えば嘘になるけど、それよりも困惑の方が大きかった。
私はこの家で何をするべきなんだろう。流石に家事ひとつせず住まわせてもらう訳にはいかないし、かといって勝手に色々触っていいのか…。
とにかく私は、彼に不快な思いをさせないようにしないと。
「……いえ、何でもないです」
「…………………」
ふにっ
私が俯いて答えると、焦凍さんが無言で私の頬を両手で包みふにふにとする。訳が分からなくて「っ、?」と困惑する私に、彼は口を開いた。
「俺はエスパーじゃねぇし、多分他のやつより人の考えてる事とかに鈍い方だと思う…自分で言うのも何だけどな」
「え…?」
「だから、言ってくれなきゃ分かんねぇ。お前って何か頭の中では色々考えてるタイプなんだろ。俺の知り合いで緑谷っていう似たような奴がいるから、なんとなくソレは分かる。今のお前…考え事してる時の顔だった」
「あ、あの…」
「俺はちゃんと、お前の気持ちを知りてぇんだ」
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なんだよたけしビビってんのか(プロフ) - 全作品絵が本当に美しくて初めて絵で感動しました。また伏線が所々あってその上感動するなんて天才... (2021年5月23日 2時) (レス) id: dfdea40777 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - タイトルの絵もなんかアニメ「PSYCHO-PATH」に絵柄が似てて感動。しかも、物語にもなんか感動した。 (2019年9月14日 0時) (レス) id: 2712192e09 (このIDを非表示/違反報告)
るみ - 終わり方最高です……!泣いた (2019年4月13日 21時) (レス) id: 4ab93c79dc (このIDを非表示/違反報告)
ファアアアア(プロフ) - 絵がちょくちょく入ってくることによりなんか映画のワンシーンでも見ている気になりますね (2018年9月8日 15時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
トミ - すごく吸い込まれるようなお話で…次を読むのが楽しいです。 (2018年6月30日 23時) (レス) id: 3237980cf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NAOKI | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時:2018年5月29日 17時