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お隣さん、五日目。 ページ7

黙々と食べ進めているところで、藤野さんが口火を切った。



「あ、あの」


「ん?」



カレーを口いっぱいに頬張ったところで彼の目を見た。
藤野さんは何がおかしかったのかふふっと笑ってから言った。



「こんな事言うのも恥ずかしいんですが、俺、京極さんともっと仲良くなりたくて」


「へ……?」



それは私も同じだ。
コミュ障みたいなところあるし、お隣さんが来ると聞いた時、絶対仲良くしようと思っていた。
まさかこんなかっこよくて優しい人が来るとは。



「私もっ……仲良くなりたい、です」



振り絞るように言えば、藤野さんは優しく微笑んでくれた。



「じゃ、もっと仲良くなりましょ?まずは……そうだな、呼び方と、あと敬語なくしません?」


「敬語なくすのは賛成ですよ。呼び方は……」



呼び方っつっても、そもそも下の名前知らんしな……
私も仕事以外で人と関わらなさ過ぎて自分の下の名前忘れそうになる。病院行くべきかな?



「あ、俺、友達からはフジって呼ばれてるから、京極さんもそう呼んでくれると嬉しいかな。あと、京極さんって下の名前なんて言うの?」


「フジ君……で合ってるかな?ごめんね、私呼び捨て慣れてないから。……えと、私の下の名前はA。呼び捨てでも何でもいいよ」


「Aちゃんか。可愛い名前だね。それじゃあ俺はこれからAちゃんって呼ぶよ」



藤野さん、もといフジ君は、またにっこり笑う。
フジ君の笑顔って、すごく癒されるな。



「分かった、改めてよろしくね、フジ君」


「こちらこそ、Aちゃん」


「……あっ、カレー冷めちゃう」



真っ直ぐ目を見て微笑みかけられ、なんだか恥ずかしくて話を逸らしてしまった。
フジ君は『あ、そうだね』と言って、カレーを頬張った。



呼び方も言葉遣いも変えたことで距離が縮まり、少しだけ話しやすくなった。
私がカレーを頬張っていると、フジ君が私のことをじっと見ていることに気がついた。



「フジ君……?どうした?」



上目遣いでチラッと視線を送ると、フジ君は『ううん』と首を振った。



「こんなに可愛いのに、Aちゃんって独り身なんでしょ?それがなんだか不思議だなって思って」



性格に難アリって意味か?
私そんな悪女じゃないよ?



「そう言うフジ君は彼女いるんでしょ?良いねぇその彼女さん、幸せだね」


「へ?いないけど?」



え?いないの?
私は目を丸くした。
こんなにかっこいいのに独り身とか意外過ぎ。

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作者名:緋奈香 | 作成日時:2019年8月13日 6時

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