お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ46)

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お隣さん、四十三日目。ページ46

「それは、どういう……」

「そのまんまの意味だよ」

京極A、今までの二十何年の人生の中で一番最悪な事態が起きてしまいました。

「何で私が転勤なんてしなくちゃならないんですか」

朝、いつも通り出社して、仕事をこなす。
お昼休憩には作り置きのおかずを詰めたお弁当を頬張る。その時間が至福で仕方ない。
でも、お弁当を食べ終わった頃。
突然部長に呼び出された。
そして転勤を言い渡された訳だ。

「仕方ないだろう、上からの命令なんだから。
京極は我が営業部でもトップの成績を持つ優秀な人材だからな。
まぁ、本社に行けるだけありがたいと思いなさい」

私が務めるのは、某グループ企業の支社。
今回の辞令では、『本社への異動を命ず』と書いてあったらしく。

「それはありがたいんですが……本社って確か、関西の方でしたよね？引越ししなきゃですよね？」

「あぁ、そうなるが……」

別に良いんだ。
噂によれば、本社の方が給料も良いらしい。
だから、今よりいい生活が出来るんだ。
そう、考えようとしたけど。

「……分かりました。京極A、本社で頑張ってきます」

部長に一礼すると、『ごめんな』と言葉をかけられた。

「俺も止めはしたんだ。本社の仕事はハードだから、あんな華奢な京極に本社への異動を命じるのは酷なんじゃないかと。
だが、これは社長直々に言われた話でな……」

我がグループの社長の財力と言ったら、半端じゃない。それこそ月行けるレベル。
だからその社長に逆らえばあとが怖い。

「そんな顔しないでください、部長。
もしまた営業部がピンチになったら助けに来ます。
私は営業部のみんなが大好きですから」

にこりと笑えば、部長も笑い返してくれる。
こんなにちゃんと喋ったのは、久しぶりかも。

「頼りになるじゃないか。
……京極。転勤は来週だ。それまでここで頑張ってくれよ。それじゃあ」

部長は私を見て頷き、デスクに戻っていった。
私は部長が戻った後、一人頭を抱えていた。
なんで私が？この営業部には私より優秀な人材もいるのに。
何より……

「……離れ離れだ」

フジ君にしたってキヨ達にしたって。
もう会えないかもしれないと考えると悲しくなる。
あんなに仲良くなれたのに。

ずっとこのままだと思ってた。
一年後、一緒にフジ君と記念日をお祝い出来ると思ってた。
本当に、絶望の淵に立たされた気分だ。