お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ40)

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お隣さん、三十七日目。ページ40

朝起きると、頭がガンガン鳴って痛い。
吐き気もする。私はすぐに察した。
二日酔いだ、と。

それでも出勤しなくちゃいけない。
他称・営業部のエースである私が欠勤するわけにはいかないのだ。
言っとくけど他称だからね、他称。

頭を押さえながら家を出る。
ふらつく足でなんとか駅に辿り着くも、そこから先は通勤ラッシュの嵐で休めそうにない。
何やかんやで死にかけながらどうにか会社に辿り着けた辺りは褒めて欲しいものだ。

「京極さん、おはよう」

会社に着いていつものデスクに座れば、隣のデスクの同僚に声を掛けられる。
おはよう、と力なく返すと、心配そうな顔をされた。

「あれ、なんか元気ないね。……もしかして二日酔い？」

「嘘っ、なんで分かるの？」

「だって顔色悪いし、京極さん二日酔いして来る時っていつも機嫌悪そうなんだもん。すぐ分かるよ」

そんな分かりやすいんだ。
その事に若干絶望しつつ、私は苦笑した。

「そうだ、京極さん。水飲むと二日酔いに効くらしいよ。もし飲んでなかったら試してみて」

そう言って、彼女はデスクの背後にあったウォーターサーバーで水を汲んでくれた。
そういえば二日酔いが酷すぎて朝食すら食べてきてなかったな。

その同僚から水を受け取って飲んでみると、少し楽になった気がした。

「ありがとう。これで仕事に集中出来るよ」

「いえいえ。しっかし本当に京極さんは仕事人間だなぁ。仕事が恋人って感じ」

「失礼だなぁ」

ため息混じりに言えば、彼女は悪戯っぽく笑いながらごめんごめん、と謝った。
いい人だし、別に気にはしないけど。

お昼になって、適当に駅前のコンビニで買ってきたおにぎりとサラダをデスクに置いた。
お昼休みは比較的長いから、外に食べに行く人もいたけど、そんな気力はなかった。

ご飯を食べていると、突然スマホの通知が鳴った。
電話ではなかったことに胸をなでおろして画面を見ると、それはフジ君からで。
ちょっと辛く思ったけど、トーク画面を開いた。

『昨日はごめん。なんか勘違いさせたみたいで』

と、一言だけ。
そりゃあ彼氏が他の女と一緒にいれば、しかもあの時間帯なら勘違いの一つや二つ当たり前でしょ。
そう思いながら、『大丈夫』とだけ返した。

どうせ隣の部屋なんだし、またちゃんと直接話そう。私も怒ってるように思われたら嫌だし。
私は小さく頷き、それ以上スマホを見ないように伏せてから、また仕事に戻った。