お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ35)

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お隣さん、三十二日目。ページ35

今日は日曜日、飲みに行く当日だ。
これから30分後くらいにキヨと待ち合わせだ。
駅前にキヨみたいな有名人がいたら紛れもなく騒ぎになるのは目に見えているが、今回も例の如く、ご都合主義でご勘弁頂こう。

駅前でスマホの画面をなぞりつつキヨを待つ。
今度フジ君とデート行きたいなぁ……なんて、
こんな時に思うことじゃないけれど。

暫くすると、キヨが小走りでこちらに向かってきた。時計を見れば、待ち合わせを5分ほど過ぎている。

「ごめん、遅れたわ」

「私もう10分程待っていましたが」

「今度何か奢ります」

「無罪」

そんな不毛なやり取りを経て、二人で電車に乗り込んだ。フジ君達から話を聞いていて嫌な予感はしていたので、当初より待ち合わせ時間を早めてもらっていたのだ。だから電車に間に合えた。

着いた居酒屋は他のところと何ら変わりもなく。
むしろ他のところより比較的安かったりした。
キヨが店員さんに『友人が先に来ている』と伝えると、席に案内してもらえた。
前もこのパターンあったな。

席に座っていたのは、二人の男の人。
一人はマスクをしていて、一人は黒縁の眼鏡をかけている。

「よぉ、レトさん、うっしー」

「よぉ、キヨ君」

「よぉ、キヨ……つーか何だこのノリ。
……そうだ、その子が例の……」

眼鏡の男の人がこちらに目をやった。
キヨが何故か得意げに笑う。

「そう、こいつがA。ほら、挨拶しろ」

お前は親か、とキヨを睨みつけてから、二人に向かって頭を下げた。

「京極Aです、よろしくお願いします」

顔を上げると、二人とも優しく微笑んでくれていた。

「おう、よろしくなAちゃん！俺はレトルトっていうんやけど、まぁレトさんでもレト君でも好きなように呼んでや」

そう言ったのはマスクをした人。
レトさんだな。なるほど。

「俺は牛沢。別に牛沢でもいいし、後はうっしーって呼ばれたりもするから好きなように呼んで」

レトさんの次に口を開いたのは眼鏡をかけた人。
みんなうっしーって呼んでるっぽいし、馴れ馴れしいけどそう呼んでみようかな。

「えぇと、レトさんとうっしー……？あの、改めてよろしくね！」

「うわぁ、Aちゃんマジで可愛ええ！俺の隣おいでや！！」

そう言ってレトさんが自分の傍らをトントンと叩く。そちらに行こうとすれば、今度は誰かに腕を引かれた。