お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ3)

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お隣さん、一日目。ページ3

今日は休日。
思い切りだらけようと眠い目をこすり朝食の支度をしていると、家の呼び鈴が鳴った。

「はい、どちら様ですか」

「すみません、今日隣に引っ越してきた者です。
引越しのご挨拶に上がりました」

「あ、分かりました。お待ち下さい」

確か、大家さんがこないだ言っていたな。
隣に人が越してくると。
この人の事だったのか。
そう思いながらドアを開けた。

「初めまして、藤野と申します。今日お隣に引っ越してきました。えっと、あなたは京極さんで合ってますよね？」

待て待て。
確かにほとんどおかしな所はないが。
この人、風貌が完璧不審者なんだが？

「え、あ、はい。京極です。ふ、藤野さんですね。
よろしくお願いします……」

戸惑う私を見て、藤野さんは何か混乱してしまったようだった。
混乱してんのこっちだからな？
だって目の前にリアル不審者がいるんだもん。

「京極さん、よろしくお願いします。あ、後これつまらないものですがご挨拶ということで」

彼が差し出してきたのは、有名なお店のお菓子だった。結構高くてなかなか手出しできないような代物だから、触るのすら初めてだ。

「あ、はい、お気遣いありがとうございます」

しどろもどろになりながらやっとの思いでお礼をすると、藤野さんがふふっと笑った。
グラサンマスクで全く分からないけど。

「……どうしました？」

「いや、可愛いなぁと思って。……あ、ごめんなさい、気持ち悪いですよね会って初日に」

「へ？」

可愛い？私が？
でも何故かこの不審者的風貌の藤野さんから言われても気持ち悪いとは思わなかった。なんでだろ……

「あぁ、いえ。嬉しいですよ。ありがとうございます」

「そうですか。良かったぁ……」

ほっと胸を撫で下ろす彼が、なんとなく可愛らしく見えてしまった。

「あ、じゃあ僕は引越しの荷物の整理がまだなので、これにて失礼させていただきます。
それでは京極さん、これからよろしくお願いしますね」

「あっ、はい。よろしくお願いします。それでは」

ドアをパタンと閉め、ふぅ、と息をついた。
なんか不思議な人だな、あの人。
普通初対面の人に可愛いなんて言わないのに。

それからずっとお隣さんのことを考えていたら、トーストを焦がしてしまった。
マーガリンを塗っても誤魔化せなかった。
でも、本当は苦い筈のトーストが、
何故だか少しばかり甘く感じた。

「……砂糖なんか、入れてないのにな」