お隣さん、十三日目。 ページ15
*Hira side*
実況を撮っている最中、なんとなくフジの様子がおかしいのを察したらしいキヨが、一度録画を停止した。
すぐ隣の彼に目をやり、キヨは問うた。
「ちょっと、どうしたんだよフジ」
「ごめん、ちょっと考え事しちゃって……さっきの所から撮り直そうか」
「待って」
俺の声に、キヨもフジも同時にこちらを見た。
デスクの位置関係としては、二人とも丁度俺の対岸にいることになる。
すぐ隣はこーすけのデスクだ。
俺は自分のモニターとこーすけのモニターの間に顔を出し、二人を見た。
「フジ、なんか様子おかしいよね?何かあったんなら、まずは俺らに相談してよ。じゃないと解決しないまま撮ったってまた同じ事になるかもよ?」
「あぁ、ラーヒーの言う通りだな。で、フジ、心当たりはねぇの?」
俺の言葉にキヨは頷いてくれた後、もう一度フジに目をやった。
フジは少し考え込み、何か心当たりがあったのか、小さく顔を上げた。
「……もしかしたら」
俺とキヨは、ごくりと生唾を飲み込み、言葉の続きを待った。
「……お隣さんかもしれない」
「「お隣さん?」」
同時に、俺達二人は聞き返した。
そういえば、フジはこの間引っ越したって言ってたな。
うるさい隣人にでも当たったのだろうか。
「それはつまり、隣人に迷惑かけられてるってこと?」
俺が聞く前に、キヨが質問した。
俺の言いたいこと全部持ってくなこの人。
「いや、違うんだ。むしろ迷惑かけてるのは俺の方だと思う」
「……じゃあどういうことなの?」
俺が聞き返せば、フジは言いにくそうに、それでも確実に言葉を繋げた。
「……一目惚れ、かな」
「「一目惚れ?」」
おいおいこのパターンさっきもあったぞ。
キヨ、頼むから俺にも出番をくれ。
「俺の新しいお隣さんは、すごく可愛くて綺麗な人なんだ。それに優しくて──。初めて挨拶に行った時、なんと言うか、驚いた。電流が走ったみたいだった」
上手く説明できないけど、と付け足すフジは、相当必死なのか、表情が険しかった。
「……その人、名前は?」
「……京極Aちゃん」
そういえば、フジが引っ越したのは先週だよな?それなのにもう新しい隣人をちゃん呼びとは、さすが天然タラシだな。
「……ふーん、なるほどねぇ」
何で聞いたんだよと思う程興味無さそうな様子のキヨ。でもフジが一目惚れなんて珍しいし、俺としては応援してやりたいという気持ちがあった。
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作者名:緋奈香 | 作成日時:2019年8月13日 6時