お隣さん、十一日目。 ページ13
＊Fuji side＊
朝、家を出た時、視界の端に誰かが映った。
そちらに顔を向ければ、やはりAちゃんだった。
謝らなきゃ。そう思っていると、声を掛けられる。
「あ、フジ君……おはよう」
「ひぃっ……Aちゃん、お、おはよう」
驚きのあまり素っ頓狂な声が出る。
絶対ヘタレだと思われた。心折れそう。
でも謝らないと、と意を決して口を開いた。
「あの、Aちゃん……昨日は、ごめんね」
彼女が帰った後、自身の言動を思い返して気が狂いそうになるほど恥ずかしくなったこと。
ずっと謝りたいと思っていたこと。
包み隠さず彼女に伝えれば、優しい声が返ってくる。
「そうなの……まぁ恥ずかしくもなるわよね。でも別に謝らなくてもいいよ」
「え……？」
思わずか細い声で聞いた。
女子か、と自分でもツッコみたくなる。
「だって、私は別に嫌じゃなかったもん。何でだろうね、会って一週間ちょっとしか経ってないのに。不思議だねぇ」
そう言ってふわりと微笑む彼女。
思わず安堵の溜息を零した。
なんて優しい、慈愛に満ちた人なのだろうか。
マザーテレサかよ(？)。
目の前にいるAちゃんは、昨日とは違うスーツ姿だ。きっとこれから仕事なのだろう。
その姿が少し凛々しく見えて。
かっこいいなぁ、と思ってしまう。
最俺ハウスまで向かう道中、彼女も途中までは道が同じだったので一緒に歩いた。
すごく短く感じたけど、とても楽しかった。
彼女に手を振り別れ、最俺ハウスを目指す。
しばらく歩くと、目的地に到着した。
ドアを開ければ、『遅かったじゃんか』と、何故かニヤついたキヨのお出迎えが待っていた。
「すまん。でも遅刻してないだろ」
「まぁな」
それだけ言って、キヨは戻っていく。
何なんだあいつ……
リビングに行くと、既にヒラも到着していた。
「あ、フジやっほ〜。遅かったね」
「お前もそれ言うか。だから別に時間は過ぎてないだろ」
「怒んないでよ」
相変わらずヒラはふわふわしてんな。
それが彼のいい所でもあるのだが。
「……あれ、そういえばキヨは？」
あいつが言い出しっぺなのに、どこ行ったんだろ。
「キヨなら実況部屋に行ったよ。準備してるんじゃない？」
「……じゃあ俺も行かないとかな」
実況部屋に向かおうとした時、丁度そのドアからキヨが顔を出した。
「二人とも、早く実況撮ろうぜっ！」
彼の言葉に、俺とヒラは同時に頷いて、実況部屋に入った。
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作者名：緋奈香 | 作成日時：2019年8月13日 6時
