お隣さん、九日目。 ページ11
*Fuji side*
Aちゃんと一緒にゲームをして、彼女が帰ったあとのこと。
俺は一人で頭を抱えていた。
幾ら嫌だと拒もうが、現実は酷いものだ。
俺の頭では、さっきのAちゃんとのやり取りが、勝手に脳内再生されていた。
『でも、それくらい表情豊かな子の方が、俺は可愛いと思うよ?』
『えー俺のせいなの?俺から言わせてもらえば、Aちゃんがそんなに可愛いのが悪いと思うんだけど?』
『それとも、Aちゃんが寝付くまで、俺が添い寝しててあげよっか?』
気が狂う程恥ずかしくなるような台詞の数々が、巻き戻しを食らって俺の脳内に鳴り響く。
その度に、どうしても頭を抱えてしまうのだ。
「俺マジで頭おかしいってぇぇ……」
その言葉に誰かが反応してくれる訳でもなく、ただ無情に、時計の針の音が余韻すらも搔き消した。
そんな俺の耳に、軽快な着信音が飛び込んで来た。
画面を見てみれば、着信はキヨからだった。
スっと画面をなぞると、聞き慣れた大声がスマホのスピーカーから響いた。
「フジ?明日って時間ある?」
「明日?……うん、あるよ」
「マジ?それじゃあ明日ラーヒーと3人で実況撮ろうぜ。こーすけは用事があって来れないらしいけど。急で悪いな」
本当に急だな。
こーすけがいないのは残念だけど、仕方ないか。
「いいよ。時間は?」
「……うーん、じゃあ9時半に最俺ハウス集合な。
俺ん家今片付けてるし、ラーヒーも無理らしいし。お前ん家も引っ越したばっかで俺ら場所知らないから」
そうか。今度みんなに俺ん家の場所教えとかないと。忘れるとこだった。
「分かった。9時半に最俺ハウス集合ね、了解」
「ありがとな!じゃあ明日、遅れんなよ!んじゃ」
それだけ言って、通話はプツリと切れた。
なんと言うか、つくづく台風のような男だ。
それとも嵐の方が的確だろうか。
時計を見てみれば、現在の時刻は午後10時半。
もう少し起きていてもいいけど、明日の事もあるし、このまま起きていても精神が蝕まれるだけだから寝る事にした。
敷布団の上に寝っ転がる。
掛け布団を掛けながら、今度ベッドを買わないと、と思って、近くのメモ帳に書き留めた。
横になったはいいが眠れない。
あの言葉達だけ見れば、俺はただの変態だ。
というか、夜に同年代らしい女性を部屋に招いてる時点でやばい。
急にイカレ出したのか、俺は。
今度彼女に会った時に謝ろう。
そう決め俺は目を瞑った。
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作者名:緋奈香 | 作成日時:2019年8月13日 6時