きゅんとしたら負け。

ムードメーカー ページ4

「あはは！まっじで！」


よく通る綺麗な声。

隣のクラスの私でも、よく聞こえましたよ。

だけどそれは、きっと私が大樹の声を注目して聞こうとしちゃうのもあると思うんだ。


「大樹、彼女彼女」
「うお、じゃなお前ら！」


お友達が大樹を叩いて、私の存在を教えてくれる。
私の元に、駆け足で来る大樹。

私よりも頭一つ分大きな背。
にかっと笑う広角の上がった口。

ああ、大樹だ。



「C組HR長かったん？」
「え、B組が早いんだよ」
「まじ？じゃあ俺の声全クラスに聞こえてっかな」
「私のとこは聞こえたよ」
「耳がいいなAは」
「大樹の声が大きいんだよ」



なんて、一通りの会話をして歩く。

彼は、クラスのムードメーカーで、学校中の人気もの。

男女問わず人気があるから、常に人だかりが。

ほら、こうやって歩いている間にも、何人もの人が彼に「バイバイ」だの「じゃあね」だのを言う。


その一つ一つに丁寧に接する彼も凄いのである。



「ごめんねいつも待たせて」
「いーのいーの、気にしないで」



今日みたいにHRが理由じゃなくて、たとえば……私の委員会とかで、大体帰りを待ってもらっている。

それでもいいよいいよと受け入れてくれる大樹に、何度も救われた。




「つーか、待ってんのも案外楽しいよ？」
「友達と話せるもんね」
「いや、Aの話しが出来るの、あいつらに」
「私の、？」
「そ。」
「楽しいの？」
「楽しい、つーか」




いっつもはふざけてばっかりの彼が、真面目な顔して。




「俺の彼女っていう度に、変な奴が来ないように、守れるじゃん。」




バリア？つかシールド？とか言うから、せっかくカッコよかったのに、笑っちゃったよ。


もう、だいすき。





◇
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