後輩 ページ21
「あっ、A先輩」
彼は、探しましたよと言わんばかりに腰に手を当てて、歩み寄る。
「A先輩の教室まで行ったんですよ?」
そんなに彼が私のことを探す理由があったのかな?
大切なことを忘れている気がして、私はとりあえずごめんね、と紡いだ。
1つ下の大樹くんは、いわゆる恋人。
礼儀正しくて優しい彼がプンスカと怒るのは、見ていて少し微笑ましかった。
「先輩、その顔は忘れてますね?」
「うーん、何だったっけ?」
はぁ、と大きなため息をつく彼。
ますます申し訳ない気持ちは募るけど、なかなか思い出せない
「今日、一緒に帰るって約束した……」
「ええっ!?あ、そう、だっけ……」
すっかりご機嫌斜めになってしまった。
そりゃそうだ、だって私は大切な約束を忘れていたから。
大樹くん、すごく楽しみにしてくれていたのに
私、酷いことしたなぁ。
「ごめん、今用意してくるから、待ってて」
「……僕も行きます」
「ほんと?ごめんね、用意急ぐから !」
流石に反省したので、帰りにアイスでもおごってあげよう。
別にもので釣って許してもらおうとかそういうのでは無く。
何もしないのは私か嫌だから。
「僕との約束の他に、何か予定でもありましたか?」
「ううん、何も無いよ」
良かった、友達とのカラオケは明日。
今日と被っていたら本当に嫌われてしまうところだった。
「良かった、」
「本当予定入れて無くて良かった、ごめんね」
「そうじゃ、なくて」
私の右の手を両手で握って、少し震えている。
潤んだ瞳が私をしっかり捕まえて
「てっきり嫌われちゃたのかと思いまし、た」
「忘れてただけで、本当に良かったです」
へにゃっとトロけた笑顔。
目尻がトロンと下がり、口角はくいっと上がる。
こんなに可愛い彼のこと、一生嫌いになんかなれません。
(怒った?)
(怒ってませんよ?)
(よ、良かった)
(アイスはトリプルですからね)
(やっぱり大樹くん怒ってる……!)
◇
年下
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名乗るほどのものである - めっちゃ面白いですね。だいすきで、いっつもみてます! (2018年6月22日 22時) (レス) id: 47d2a3a5e8 (このIDを非表示/違反報告)
ぐーるな - 『卑屈な先輩』がきゅんきゅんしてお気に入りです〜!というか、1話目からきゅんきゅんして…負けましたぁ!! (2017年7月26日 17時) (レス) id: 1b19e65de3 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー - ムードメーカーヤバイです!キュンっとしました! (2017年5月26日 22時) (レス) id: 1f7727a96e (このIDを非表示/違反報告)
雨飴(プロフ) - まさかの1話目で負けました、、、強すぎますよ (2017年5月26日 18時) (レス) id: 91eb9af7ae (このIDを非表示/違反報告)
江戸の兎 - 同じく、優男にやられました(チーン)でも、すごくきゅんと来ました!これからも頑張って下さい! (2017年5月19日 20時) (レス) id: 7c6ad326a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐらたん。 | 作成日時:2016年2月21日 3時