二十一 ページ21
土方side
「...この件は無しにしてやる」
「ありがと」
席に座りそう言うと満足気に笑うA。
少しイラつくが、無邪気に笑っている子供みてぇですこし胸が高鳴る。
顔がにやけそうになるのをこらえて、顔に力を入れる。
「...怒ってる？」
顔に力を入れすぎて怒っているように見えたのか、俺の顔を覗き込むA。
次は上目遣いかよ...。
ただでさえにやけそうになるのを堪えてるのにまた上目遣いなんてされたらどうしようもない。
顔を見られないようにAの頭をくしゃくしゃにする様に撫でた。
「折角セットしたのに」
「お前が悪ｨ」
Aを見ると、口を尖らせて頬を膨らませていた。
一つ一つの動作も、表情も何もかもが愛しい。
何かをする度に胸が高鳴るのは、こいつが悪い。
「(可愛すぎ...)」
1つ溜息をつくと、横に座っていた総悟に腹パンを喰らう。不意打ちに声を出すと総悟は嬉しそうに笑った。
「...てんめさっきはよくも」
「総悟くん、隠れてやっても見えてるんだからね？」
「うぅ...すいやせん」
こうやって総悟と喧嘩する時はいつも
Aが止めに入る。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「みんな酔いつぶれちまったな」
「総悟くんお酒のんじゃってるし」
酒に強い莉花も酔い潰れるほどどんちゃん騒ぎした。総悟は当たり前のように酒飲みやがるわ、近藤さんは全裸になるわ。
「でも、良かった」
倒れている総悟の頭を撫で、少し目を細めて微笑むAは何処か悲しそうな表情をしていた。
「もう、お花見も出来ないからさ」
俺達は花見をする前に発つ予定だった。
Aは１粒涙を流して俺に笑顔を向けた。
「今日、楽しかったかな？」
頑張って笑みを作っているようにしか見えなかった。涙を見せたくないかのように、精一杯の笑顔で。
「...お前と一緒ならなんだっていい」
「土方君...」
「お前が一緒ならなんだって楽しいんだよ」
Aは俺に飛び掛ってきて抱きついた。
俺はできるだけ優しく頭を撫でた。
「A、こっち見ろ」
そう言うとAは抱きついたまま、俺の顔を見る。
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作者名：唐辛子の民 | 作成日時：2018年4月8日 19時
