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それからは、まるで地獄だった。
もう配信どころじゃなくて、夜だしやめようか、という叶の言葉で配信は終了。
俺は、何も喋らなかった。
配信が終了してから、ぴこん、と携帯が光った。
何も聞かなかったことにするね、という叶からのメッセージに、あいつの優しさが見えていた。
でも、俺は残った画面に映されたコメント欄が見えている。
>葛葉…、男好きか〜
>うーん…、て感じ
>2年も隠してたか〜
>イメージ崩れるなあ
どれもこれも、俺を否定する言葉に見えた。
呼吸が荒くなり、首筋を流れる汗は止まらない。
じわ、と目頭が熱くなり、耐えられなくなって防音室を出た。
「あれ、サーシャ。配信終わったの?…どうした?」
たまたま前を通った閃ちゃんの顔を見て、ぽろり、涙が零れた。
俺だけじゃない、こいつにも迷惑をかけてしまう。リスナーにも、叶にも、イブラヒムにも、迷惑をかけてしまう。
何も考えられない頭で、俯いて、ぽつり、ひねり出した言葉。
「…バレちった」
その言葉で察したのか、少し長い沈黙の後、優しく頭を撫でられた。
大丈夫。そう言われている気がした。
「オムライス、食べようよ」
その日のツイッターのトレンドには、俺の事ばかりが並んでいた。
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2022年9月7日 11時