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「久しぶり、サーシャ」
久々に聞いた彼の声。目頭が熱くなったけれど、まだ泣くわけにはいかない。別によりを戻すと決まったわけでもないし、もしかしたら、永遠の別れを言いに来たのかもしれないのに。
少し俯いたまま、こくり、頷いた。俺んちの鍵を持ったまま、彼は家の前に行った。
「家、入ってもいい?」
「ん」
少し前まで自分の家でもあったくせに、随分と他人行儀だ。
一緒に家に入れば、鍵をいつもの場所へと置く。そりゃ、場所はわかるよ。
「急に来てごめん、夜遅くに」
「いいよ、帰ってきたところだし」
「はは、お疲れ。…それ、晩飯?」
指をさされたのは、俺の持っているコンビニ袋。そうだけど、と答えると、少し乾いた笑いが聞こえた。
「体調悪くするよ」
「別に、今更」
リビングに行った閃ちゃんは、広くなった家の中をぐるりと見渡した。広いね、なんて言いながら。
ソファに腰掛けると、隣を叩かれた。隣に座れ、ということなんだろうが。
「…留守電、ありがとう。聞いたよ」
「おう」
「だから、もう一回ちゃんと話をしに来た」
「うん」
「…俺のことまだ好きって、本当?」
「うん」
「嘘じゃない?」
「うん」
じわ、と目頭が熱くなる。まだ、まだだ、我慢しろ。
そう思えば思うほど、我慢ができず、ついに涙が零れた。震える声で、できるだけの精いっぱいの俺の気持ちを伝えた。
「…す、き、…うそじゃ、ない。あいしてる」
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2022年9月7日 11時