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その日の夜、叶も帰って、晩飯も食い終わって、今はソファに座って食休み中。テレビを見ながら、今日面白いものないな、なんて話をしている。
「…ねぇ、このまま死ぬまで独身でいる気?」
無意識に口に出ていた言葉。今日叶に言われたことが、俺の思考を搔き立てたのかもしれない。
閃ちゃんは少しびっくりした顔をしていたけど、すぐに表情は戻って、俺の頭を撫でた。いつもなら、子供扱いするなっていいうところだけど。今日は、頭を撫でる手がいつもよりも優しくて、なんだか悲しくなってしまった。
「独身でいるよ。結婚のこと言いたいんだろうけど、俺と結婚したら、お前がちゃんとした魔族と結婚するときに邪魔になる経歴になるだろ」
「…ちゃんとした魔族って何」
「俺みたいな軟弱な人間じゃない、ちゃんと地位のある魔族。お前だっていつかは子孫を残さないといけないだろ。俺とじゃ子孫は残せないし、何よりお前の邪魔になる」
その言葉には何も返せなかった。確かに寿命が違うとはいえ、そんなに俺の将来のことを考えてくれているとは思わなかった。
この幸せが永遠に続けば、なんて間抜けなことを考えていたのは、どうやら俺だったらしい。
そのあと、そうか、しか俺は言えずにいた。もう結婚の話はしないでおこうかな、と考えてしまった。
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2022年9月7日 11時