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その日はまっすぐ家に帰って、玄関の鍵をかけた。リビングに向かおうとしたところで、そういえばあいつも合鍵を持っていることに気付いてチェーンもかけてやった。
今日は顔を見たくない、そういうときってあるだろ。
2ヵ月前に開けて安定し始めた耳たぶのピアスをくるくると回しながら、部屋の電気もつけずにぼんやりとつまらないテレビを見ていた。
2年も一緒にいて、どうしてあいつが俺しか見ていないわけじゃないなんて思わなかったんだろう。
そう思うほどに、俺はあいつに依存しているのかもしれない。
「なぁ」
玄関のガチャガチャという音が聞こえたかと思いきや、そんな声が聞こえた。
ちらりと玄関に目を向けると、チェーンがかかっているせいで数センチしか開いていない扉から見えるあいつの姿。
「なぁ、何怒ってんの。‥左馬刻」
返事なんかしてやらねぇ。
別に怒ってないんかいないし、なんの感情も沸いていない。
‥ただ、なんだか、胸にぽっかりと穴が開いたような、そんな気持ちがするだけ。
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2018年9月7日 23時