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「あれ、左馬刻じゃねえの。お前こんなところで何してんだ」
「ほんとだ、左馬刻だ。そこ親父の部屋の前だろ、何してんだよ」
「あ?うるせぇな。なんでもいいだろうが」
そう、今目の前を通った2人の言う通り、俺は組長であるジジイの部屋の前にいる。
合わせたい人がいると言うと、ジジイは隣にいる孝太郎を見るなり俺に外で待つように言った。
こうして扉の前で待つこと約20分。一向に出てこない。
「‥大丈夫かよ、あいつ」
少し心配になる。年寄りとはいえヤクザ。それ相手にホストが立ち向かってどうするんだ。
なんてうだうだ考えていると、古臭い音をたてて扉が開いた。
「あーちゃん、組長さんが来いって」
どうやら呼びに来たのは孝太郎のようで、ちらりと部屋を覗くと部屋の奥にいつものように座っていた。
別に、ジジイに初めて会ったわけではないから怖いとも何とも思わないけれど。
「‥なんの話してたんだよ」
「え?内緒」
「はぁ?」
「内緒ー」
まるで子供のような無邪気な笑顔を見せる孝太郎に苛立ちを覚えつつ、ジジイの前に座る。
見た目は怖いけれど、とても、優しく、人の事をきちんと考えられる人。
「左馬刻、お前、男が好きだったのか?」
俺が本当にこいつのことが好きなのか、中途半端な恋愛はするなということなのか。
‥わからない、けど。
「俺はこいつしか好きになったことがないからわからねぇ」
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2018年9月7日 23時