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「わかった」
そいつの返答は意外なものだった。どうしてだ、と、胸倉を掴まれて怒鳴られるかと思ったのに。
「どうせ、一緒に住むって言っても、男同士じゃ同棲なんかできねえしな」
「‥なんだよ、それ」
「今日、行ってきた、不動産屋」
『2人で住めそうな家を探してます』
『ルームシェアですか?』
『いえ、同棲です』
『同棲ですか、婚約者の方とかですか?』
『‥男2人です』
『あー‥、今ね、男のカップルは結構断られるんですよ。女の子同士の同居とかだといいんですけど、近所の人が嫌がったり、偏見とかあるんでねぇ』
『‥そうですか。すみません、もう少し考えます』
「男同士は偏見あるんだって、一緒に住んでたら、同居とかルームシェアじゃない限り断られるんだってよ」
「‥そうかよ」
「いいよ、もう2年も一緒に居たんだ。‥もう潮時ってことだろ」
「こーた」
「そうやって呼ぶのもうやめろ。‥俺の私物とか全部捨てていいよ、もう要らないし。なんかない限りお前にはもう会わないし、お前も俺に会うな。俺の店にも来るな」
それだけ言って、ゆっくりと、ドアを開けて出て行ってしまった。
残された俺はただ1人、あいつが作った、まだ湯気がたつオムライスを見ることしかできなかった。
碧棺左馬刻、21歳。2年間を一緒に過ごした大好きな人を追いかけることはできなくて、行為による下腹部の痛みよりも、心臓を握りつぶされたように、胸が痛かった。
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2018年9月7日 23時