飛蝶 - 最愛の人 - (ページ8)

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来た道を辿って、また家に帰る。

玄関を雑に開けて、靴も揃えず鍵も閉めず。

ダンボールもそこら辺に置いて。

ここまで来たら誰にどう思われようと、どうだってよくて。

こんな姿、親が見たら悲しむんだろうなとか。

友達が知ったら幻滅するんじゃないかとか。

"「最低な人生だね、可哀想」 "

聞こえないのに、聞こえる。

心の奥の誰かが囁くんだ。

自由になれば？って。

何も考えたくなくて、悪魔の声をかき消したくて、ベランダに出て思いっきり空気を吸う。

溜め込んだ不幸と一緒に全部吐き出せたらいいのに。

目の前に広がる町には沢山人がいるのに、どうしてこんなに私だけが惨めなんだろう…

よく晴れた空に、一匹の綺麗な蝶々がひらひらと飛んで。

届きそうな距離にいる。

もっと近くで見てみたいと、柵の先へと手を伸ばせば、

小『え、ストップ！ストップ！！』

グイッと後ろを掴まれて、家の中へと引き戻された。

小『アホ！早まりすぎや！！』

いつ入ってきたのか、どうやって入ったのか、
焦る小瀧さんに私の方がびっくりして。

「な、なんで…っ？」

鍵掛けて無かったっけ？

小『なんで？って濵ちゃんに様子見て来いって言われて来たら、飛び降りようとしてるし、』

「えっ、？」

小『え、違うん？』

私はただ、

「蝶々…」

小『は、？』

「蝶々がいたから、触ってみたくて…」

小『なんや、それ……』

てっきり、追い込まれて死のうとしてると思われたのか、呆れて声もでない小瀧さん。

小『ほんま、焦った～』

「なんか、すいません…」

小『俺、濵ちゃんに殺されるとこやったわ』

「え、？」

小『渡さなあかんもんがあってん』

そう言えば、小瀧さんは私に用があるからここに来たんだよね。