飛蝶 - 最愛の人 - (ページ4)

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車は会社から遥か遠く山道を走って、
着いた場所は大きな和の雰囲気の漂う家。

車から降ろされ、強い力に掴まれたまま中に入れば、一瞬で逃げ出すことを諦めてしまうほど、強面の男が何人もいる。

広い室内を歩いた先に、異様な空気を放つ扉。

この先に行けば、
もしかしたら生きて帰ってこられないんじゃ…

そう思いながら、扉が空いて男に続き中へと入れば、

「え………？」

広い部屋の奥に置かれた大きなソファ。

周りには部下と思われる人達がいて。

この組織をまとめているであろう、真ん中の人物は…

「…なんで、………」

思わず立ちつくす私に、

〈つったってないで歩け〉

と男に強引に腕を掴まれてしまえば、

『もう下がってええから』

〈いや、でも…〉

『そいつは逃げへん』

〈え…？〉

『逃げられへんから』

あの頃と変わってない…

少し優しくなったと思ったら、私を冷たい目で見る。

まるで気持ちを見透かされてるみたいに。

『久しぶりやなぁ』

静かな部屋で、彼の声が私へと向けられる。

『変わってへんな、あんまり』

それがいい意味か悪い意味かもわからないくらい、彼の心を読むのは難しい。

『びっくりしたやろ？急にこんなとこ連れてこられて。』

悪気を一切感じないセリフに彼を睨むと、

『元彼に借金背負わされたんやって？』

「…私は承諾してない。印鑑も押してない」

『こんなん知ったこっちゃないってか』

フッと鼻で笑って、煙草に火をつけて吸い込んだ煙をゆっくり吐けば、

『もう大人やでわかるやろ。社会の仕組みくらい』

ワントーン下がった声に思わず体が固まる。

『それに、昔の俺がどんなんやったかも』

制服を着ていた彼が、今では高そうなスーツを着て、組織の上にいる。

『残念やけど、決まりは決まりやから』

そう言って席を立つ彼に、

「待って…、」

思わず出た声は思ったより響いて、

『" 元カノ " やからって優しくはせんから』

「っ…………」

私を見る冷たい眼差し。

ガチャっと重たい音と共に彼は部屋を出ていった。

最悪な再会。