飛蝶 - 最愛の人 - (ページ3)

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次の日、

家を出てから職場に着くまで誰にも見られないように、できるだけ顔を隠して、なんとか朝礼までには出勤できた。

小さな会社で事務をする私は、どこに居てもできるだけ目立たないよう過ごしてきた。

昔から積極的な性格ではないし、友達も少ない。

かと言って、これ以上の生活を望むわけでも、変えたいとも思わない。

私はここで一生、パソコンと向き合いながら生きていく。

それでいいはずなのに…

〈おい、Aって女はいるか？〉

突然、お客様窓口から聞こえた男の声。

私は咄嗟に、デスクの下に隠れて。

〈ここに居ることはわかってんだよ。今すぐ、出て来い〉

シーンと静まり返る室内で隣のデスクの同僚が、
私を心配そうに見る。

…見たら気づかれちゃう。

〈おい、そこ〉

男が同僚に気づいて、

〈誰かいんのか？〉

足音がどんどん近づいて、「はい」とも「いいえ」とも言えない空気にただ怖くなって。

〈そこに隠れてる女、今すぐこっちに来い〉

デスクの下に隠れた私を見つけて、

〈来いって〉

「ちょっ…、」

腕を掴まれてしまい、無理やり立たされれば、胸元の名札を見てバレてしまった。

〈よくも散々無視してくれたなぁ？行くぞ〉

「いやっ、！」

〈長が待ってんだよ、来いっ！！〉

室内に怒鳴り声が響くと、誰も私の事なんて助けてくれない。

抵抗もできないまま、男三人に囲まれて黒い車に乗せられる。

どこに連れて行かれて、何をされるのかも分からないまま。

私はただただ、不安で仕方なかった。