飛蝶 - 最愛の人 - (ページ15)

今日:19 hit、昨日:41 hit、合計:31,787 hit

．ページ15

それから一週間して。

屋上に行くと、あの男がいた。

「あの、マフラー返してください。寒くて毎日死にそうです。」

『俺はこれのおかげで快適』

「意味わかんない、私のなんですけど。」

ベンチに座って、今度はマフラーに顔を埋める先輩。

私はその横に座って、

「母が編んでくれたやつなんです。ないと困る…」

唯一、母の温もりを感じる物。

いつどこでだって一人ぼっちの私が、安心してられるんだ。

『…しゃーないなぁ』

マフラーを解き、逆に私の首に巻いて。

『温かいか？』

「…はい、」

『鼻真っ赤やんけ』

マフラーに残る彼の体温。

あの時の独特の香りが、近くに来て。

『…』

「……、」

冷たい唇が重なった。

『今日から俺の女な』

捉えられた目に吸い込まれるように。

もう一度重なった唇に、なぜか私は拒まなかった。