回想 ページ5
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呼ばれた店が敷居の高いところだったらどうしよう…。
自分に場違いなところだったらどうしよう…。
それより何より…
家を出る時に眼鏡を割ってしまい
私は今、全く度数の合っていない眼鏡を身に付けている。
ああ、嫌だ。
本当に嫌だ。
そんな不安だけを抱えて地下鉄を乗り換え。
辿り着いた店は
女性も入りやすい場所で、ほっと胸を撫で下ろす。
かれこれ10年前。
あの予備校で、チョ・ギュヒョンさんを知らない人はいなかった。
ゆるりと着こなしたブレザー姿の彼は
度々女の子といるところを見掛けたけど。
それを誰も非難しようもない程、抜群に成績が良くて。
甘いマスクを隠すように、いつも黒縁メガネをしていた。
そして……
知人に勧められて面接に来たクリニックは
その、彼の病院だった。
年月を経て、キュヒョンさんはより一層魅力を備えて…
その場で私を採用してくれて…
だけど。
私は、キュヒョンさんに会ったと同時に、あの人を思い出した。
キュヒョンさんの親友。
キュヒョンさんと成績を競っていた長身の彼。
売店でいつも苦いのど飴を買っていく…
チャンミン、と呼ばれていた男の子のことを。
*
CM「初めまして、シム・チャンミンです。S・J心療内科のカウンセラーをしてますので、どうぞお見知りおきを。」
え…?
その声、その名前を聞いた瞬間。
私は一瞬にして、過去に意識を飛ばしていた。
キュヒョンさんを見付けるのに必死で
向かいに座る彼をきちんと見ていなくて。
そもそも今、私の視力は0.1もない。
だけど………
その彼が、私の知る彼であるのは明白だった。
「初め、まして。Aと申します。」
CM「…どうも。」
美しかった。
完全な視力でなくても
彼がこの10年、どれだけ誠実で濃密な日々を過ごしていたか分かる程に、彼は素敵な大人の男性になっていた。
*
『だからね……
バイトしてた頃、キュヒョン先生ではなくチャンミンを見てたんだよ』
後に、何度もそう説明する私を
あなたは一向に信じようとせずに。
『別にいいですよ。目立つのはアイツだから』
そんな風に言い捨てながらも
私がその説明をする度に、どこか少し嬉しそうで。
拗ねた唇が可愛くて。
恋愛に勝ち負けはないけど。
その瞬間だけ……
その時だけは、私はチャンミンに幸せな"勝ち"を感じてた。
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りんこ(プロフ) - すぐりさん» すぐりさん、コメントありがとうございます(^^)水色のカルテとこちらのカップルを気に入ってもらえてとても感激です。ナンセンスもツボってもらえて嬉しい♪ヒロインちゃん好き過ぎて重い年下チャンミンさん、最後まで可愛がってあげて下さいね^^笑 (2022年1月29日 20時) (レス) id: d7a2e5dd40 (このIDを非表示/違反報告)
すぐり(プロフ) - カルテ 続きも読める様にして頂いて有難うございますm(_ _)mスッゴイ嬉しい…今度はあの挫けたところを突破して読めてます。ここの主人公とチャンミンの存在が大好きで…ホント読めて嬉しい(^^)チャンミンのナンセンスって言葉見る度…読める幸せ噛み締めています♪ (2022年1月29日 9時) (レス) id: bd7625e3e7 (このIDを非表示/違反報告)
りんこ(プロフ) - manmaruuさん» 甘々のリョウク先輩、manmaruuさんのツボにハマってもらえたようで(*´▽`*)私も久々に読み返して、先輩に愛されてきます(笑)いつも温かいメッセージ嬉しいです。こちらこそありがとうございます! (2019年11月19日 10時) (レス) id: f23ebc6f87 (このIDを非表示/違反報告)
りんこ(プロフ) - manmaruuさん» manmaruさん、レンガとカルテも読んでくださったんですね!ありがとうございます、そしてお疲れ様でした(=^_^=)笑 わー、本当ですか!お話の中の彼らを気に入ってもらえて嬉しいです。楽しんでもらえてよかった♪ (2019年11月19日 10時) (レス) id: f23ebc6f87 (このIDを非表示/違反報告)
manmaruu(プロフ) - リョウクさんはちょこれーとシリーズも大大大好きでこちらのお話でも出てきてくれて嬉しいです。心が潤うお話をたくさん公開して下さってありがとうございます!! (2019年11月18日 14時) (レス) id: 786210485f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんこ | 作成日時:2015年7月8日 18時