絶望的に鈍いあなたに ページ27
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どうぞ、と手で促され椅子に座る。
腰を下ろした瞬間キシ…と微かに音がして。
こちらに歩み寄るチャンミンさんに、僅かに身構えた。
CM「…………」
チャンミンさんはポケットに手を突っ込むと
ぱらぱら…と私の膝の上に飴の袋をばら撒いて。
フルーツ味、ミルク味、のど飴。
その気遣いに、緊張が解けて自然と笑ってしまう。
「和みますね。飴、嬉しいです。すごく。」
CM「子供かよ(笑)」
チャンミンさんが私の前に座って……
きっと、色々な事が考え尽くされている部屋に改めて気付く。
クッション、カレンダー、飾ってある花、
私とチャンミンさんの椅子の距離感。
少しでも穏やかな気持ちで
目の前の彼に心を開けるように。
いったい、毎日どれだけの人の話を聞くんだろう?
仕事であるとはいえ…
チャンミンさんが共有している悩みはそれだけ多く、重く、彼の精神を次第に擦り減らすのではないか、と不意に不安になった。
CM「…何を考えていますか、今。」
「ここは居心地がいいなぁと思っていました。
この前は気付けなかったけど。」
チャンミンさんが、ふっと目を逸らして
弱い笑顔が口元に浮かぶ。
あ……失敗。
チャンミンさんとの距離を少しでも近付けたくて
ただ話をしようと思って来たのに。
"この前"のことは、きっと、触れてはいけない事だった。
CM「……すみません。何度も謝りに行こうと思いました。」
「謝りに…」
CM「この前、僕がAさんにしたこと。」
いいんです。
謝らなくても、何も話さなくても。
そんな気持ちで首を振るけど…
CM「謝ろうと思って………だけど、あなたは怒るかもしれないけど、なんの理由もなくあんな事をしたんじゃない。僕には僕の、その時の感情があった。」
無駄な言葉を省くように、一言一言話してくれる。
だけど、私には抽象的なその言葉を理解出来なくて。
チャンミンさんの表情で、彼の気持ちを察しようと試みる。
…不可能だけど。
CM「あー分かってます。
意味分かってないでしょう、どうせ(笑)」
「はい。すみません。」
CM「ほんっと、Aさんは絶望的に鈍いから。
だから……僕のあの時の心理を説明しようと思うと、決定的な事を伝えなきゃいけない。
…望みなんてないのに。」
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りんこ(プロフ) - すぐりさん» すぐりさん、コメントありがとうございます(^^)水色のカルテとこちらのカップルを気に入ってもらえてとても感激です。ナンセンスもツボってもらえて嬉しい♪ヒロインちゃん好き過ぎて重い年下チャンミンさん、最後まで可愛がってあげて下さいね^^笑 (2022年1月29日 20時) (レス) id: d7a2e5dd40 (このIDを非表示/違反報告)
すぐり(プロフ) - カルテ 続きも読める様にして頂いて有難うございますm(_ _)mスッゴイ嬉しい…今度はあの挫けたところを突破して読めてます。ここの主人公とチャンミンの存在が大好きで…ホント読めて嬉しい(^^)チャンミンのナンセンスって言葉見る度…読める幸せ噛み締めています♪ (2022年1月29日 9時) (レス) id: bd7625e3e7 (このIDを非表示/違反報告)
りんこ(プロフ) - manmaruuさん» 甘々のリョウク先輩、manmaruuさんのツボにハマってもらえたようで(*´▽`*)私も久々に読み返して、先輩に愛されてきます(笑)いつも温かいメッセージ嬉しいです。こちらこそありがとうございます! (2019年11月19日 10時) (レス) id: f23ebc6f87 (このIDを非表示/違反報告)
りんこ(プロフ) - manmaruuさん» manmaruさん、レンガとカルテも読んでくださったんですね!ありがとうございます、そしてお疲れ様でした(=^_^=)笑 わー、本当ですか!お話の中の彼らを気に入ってもらえて嬉しいです。楽しんでもらえてよかった♪ (2019年11月19日 10時) (レス) id: f23ebc6f87 (このIDを非表示/違反報告)
manmaruu(プロフ) - リョウクさんはちょこれーとシリーズも大大大好きでこちらのお話でも出てきてくれて嬉しいです。心が潤うお話をたくさん公開して下さってありがとうございます!! (2019年11月18日 14時) (レス) id: 786210485f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんこ | 作成日時:2015年7月8日 18時