43. もう一度会えたなら ページ43
yb side
『 …ねえ、ほんとに大丈夫?』
『 あ?お前なあ…俺はいい歳こいたジジイだぞ?今更死なねえよ 』
死ぬならきっと、あの日。
『 …死ねるもんなら、もう、死んでる 』
こんなこと言う俺は、人間失格。
目を覚ます。瞼を開け、瞬きをする。
澄み切った青はどこまでも広がっていて、このまま呼吸することすら忘れてしまいそうだ。
『 いい?ちゃんと帰ったら連絡してよ?』
後ろ髪を引かれるように帰って行ったあいつの背中が、やけに脳裏をよぎる。
それでも、もうあんな胸騒ぎはしなかった。
「 …ったく、何したんだ、俺は……」
忘れたと思ってた。
忘れないと、前に進まねえと、って。
もう好きじゃないと思い込めばいつか自然と失くなってくれる。
そう考えれば、安心感が湧くのに、同時にやるせなさも浮かぶのは、それほど光を想う気持ちが強かったってことなんだろうな。
また、泣きたくなる。
何年経っても忘れられない。
伊野尾がやっと前に進めそうだってのに、俺はいつまでも足踏みして、澄ました顔して、後ろを向いてる。
何度も、何度も振り返って目を凝らしてる。
もうそこに、光はいないのに。
「 ……いなくなるなら、もっとちゃんと、いなくなれよ…」
あのまま、死んだわけじゃない。
どこかにいるはずだと分かっていながらも足がすくんで立ち止まったまんま。口だけ探してるなんて行って本当は、会うのがずっと、怖かった。
面と向かって、嫌いだと言われたら、二度と会いたくないと言われたら、もう生きていけない自信がある。それくらい、怖いくらい今でも光が好きだ。
最近やっとそれが口に出せるようになった。
成長と言ってもいいのかは分からないけど、景色が変わった気がする。
空を見上げられるようになったんだ。
お前を置いて逃げてきた伊野尾に構いっきりで、助けに行けなかった俺の罪は重い。
あの時『ひとりにしないで』って泣き喚いた幼馴染を一人にできなかった。想い人をそれでも優先できるほど強くなかった。
許しを乞うことなんかしない。だけど、
「 いつか、お前を、」
いつか、君を、迎えに行ける日が来たなら。
同じ空の下に、まだ君がいる。
そっとこの胸がそう告げてる。
諦めない。好きでいることも、守ることも。
もう一度君に会えたなら。
もう二度と、離さない。
44. 罪人なんかじゃない→←42. そっと手を伸ばしたら届きそう
654人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時