42. そっと手を伸ばしたら届きそう ページ42
in side
何度言っても、止めないと聞かなかった煙草。
スーツに染み付くくらい強い毒の匂い。
暗い茶色の髪は無造作というよりセットする時間も惜しんで寝てることが分かるから、笑みがこぼれて、怪訝な顔を向けられた。
宏太「 …なんだよ。んなニヤついて 」
コーヒーショップに入っても、俺が頼むのはいつもバニラのフラペチーノ。もしくは抹茶。
クソガキだな、って笑う、君の背中は嫌になるくらい大人に見えて。
星に手を伸ばすときのような好奇心やキラキラが消える。
虹に手を伸ばすときのような幸福やトキメキはもうなくなってて。
雲に手を伸ばすときのような諦め半分からのスタートが多くなってしまっていた。
「仕方ない」と割り切って。大人ぶって。
結局、無様に涙を滲ませ、いつも彼の元へ。
俺は何がしたかったんだろう。
無意識的に光の代わりを探していたんだろうか。
もしそうだとしても、これまで付き合ってきた人たちのことを一生懸命愛そうと努力した。
それだけでもうすでに愛と呼べるものがそこにあった気がするのは、あいつが昔、言ってたから。
『 愛は拒否しても、自覚していなくても降り注がれる。雨と一緒だよ。その手で、心で触れて、やっと気がつくんだ。』
キャンパスに真摯に向かうその背中。
煙草を咥えて夜空を見上げるこの背中。
『 ああ、これが愛なんだ。ってね 』
君と薮は、似ていた。
昔からずっと。呼吸すら同じみたい。
生きることを躊躇う俺をちゃんと見守ってくれてた。
ほんとはめちゃくちゃ優しいのに、変に口が悪いせいで勘違いされやすい。
それでいて「気にしてないです」みたいな顔しながら傷ついてるんだ。
ほんと、どうしようもないよ、君も俺も。
でもだからきっとお互い、一つ一つ目を逸らしてきたことを、優しさと勘違いしてたんだね。
「 やぶは、…」
光の、いかにも芸術家らしい道徳を聞かされてた頃に戻ったみたいに心が穏やかであれる。
「 薮は、まだ、光が好きでしょ?」
夕焼けに照らされた憂いを帯びた表情。
あの日のあいつと、被って見えるって言ってしまおうか。
宏太「 ……ああ、そうだな 」
そうしたらやっぱり君は、泣きさうな顔して、俺の頭を撫でるんだろうなあ。
「 あ、やっと認めたぁ 」
宏太「 …るせぇよ 」
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時