38. 生きてること ページ38
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そのあと、俺は、気がつけば光よりもワンワン泣いて、目を腫らして。
すっかり光に呆れられた。
『 うっ…ひっぐ…ごめっ…ごめんっ…』
『 …はあ、分かった分かった。ごめん、俺が悪かったよ。』
でもあいつは、うざいって顔をしながらも、俺の背中をさすってくれたんだ。
『 たくっ、いのちゃんはほんとに泣き虫だよなー』
『 …ごめん。』
『 俺が泣くのもままならねえわ 』
『 …ごめん。』
あの頃の俺たちよりも若い少年らが、キャッチボールをしてた河川敷。
『 まあ、仕方ねえよな。いのちゃんみたいな泣き虫、俺か薮しか守ってやれねえよ 』
その上にある、シロツメクサの咲く傾斜の野原で二人して横になってさ。
シシシって漫画の主人公みたいな笑い方で肩を震わせた光が、いつもより眩しく見えた。
何より、これからも傍にいるって約束してくれたみたいで嬉しかったんだよ、俺。
『 ひかるー 』
『 んあ?なんだよ 』
『 ずうっと…心友でいてくれる?』
『 おう。当たり前だ 』
『 ほんとのほんとに?』
『 ほんとのほんとだ 』
『 ずうっとって、その、ほんとにずうっとだよ?』
『 …っだー!もう!しつけえ!』
お前は危なっかしいから、と今度は幼児みたいに頭も撫でられた。
「えへへ。そっか」と笑いかければ、光も笑いかけてくれる。
こんな幸せな連鎖、他にあるだろうかとあの頃は思ってた。
『 約束だよ、ひかる 』
小さな約束を、数年後、自らの手で散らしてしまうとも知らないで。
すっ、と閉じていた目を開けて君を見ると、何とも言えない表情を浮かべていた。
裕翔「 …光さんが、慧さんが探してる人…」
「 多分だけどね。名前も一緒なら十分あり得るよ」
裕翔「 でも、確かに、光さんいつも物思いにふけてるっていうか…ぼうっとどこか見てて。」
まるで何かを探してるみたいだった。
裕翔くんがそう呟いて、俺の目をまっすぐ見つめる。
言いたいことは分かってるつもりだ。
会いにいけと、そう言うんだろう。
「 けど光は裕翔くんに何も言わずに大学を去った。行き先は分からない。絶望的だね 」
裕翔「 他に方法がきっと!」
「 いいんだ。会いたくない、わけじゃないけど、いいんだ。」
生きてる。
あいつが、生きて、まだ絵を描いていた。
その事実だけでもう胸はいっぱいだった。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時