35. いつの間にか愛おしくなって ページ35
in side
「 っ、い…ったあ 」
涙目で三角座りをしながら、あったかいココアを飲む俺の隣でクスクスずっと笑ってる奴。
「 ……裕翔くん、俺が痛がってるの、そんなに面白い?」
いつもはセットされてる髪も、先程シャワーに入ったから無造作に流されてるだけ。
けれど逆にそのオールバックな感じが色気を増していて、すごく格好いい。
裕翔「 ふふ。ごめんね?慧さんの腰を痛くしちゃって」
さすり、触れられた腰。
何だか妙に熱を持って、彼の目も薄く細められて、変な空気になった。
俺はまたブスッとした表情をわざと作りながら、彼の肩にキスを落とす。
「 …ありがとう、」
裕翔「 えー?なにが?」
「 全部、見せてくれて。ありがとうね 」
前に抱いてくれたときは、君はほら、脱いでなかったから。
だけど昨晩は全部脱いで向き合った。
肩の傷だけじゃない。背中の手術で薄くなってる傷もしっかりと目に焼き付けた。
泣きながら、君は言ってた。
『ずっと、愛されることが怖かった』
でもそれは無理だったんだよ。
だって君は、優しいから。
そんな君が、一人になるはずない。
「 一人が嫌なら、俺たち、傍にいればいいでしょ?ね?名案じゃない?」
お互いの寂しさを埋め合えば、ずっと隣にいれば、もう一人になることなんてない。
当たり前だけど、難しかったこと。
ブランケットに包まってるだけの、全裸の俺を、君はたまらなさそうに抱き上げてキスをした。
……いやでも、この歳にもなってお姫様抱っこをされるとは…
若干の恥ずかしさは、彼の肩に顔を埋めることによって薄まる。
だけど君が、嬉しそうな声で「慧さん大好き」って言うから仕方ないって思っちゃうんだよ。
裕翔「 恋愛とか、自分には無い感情だと思ってたからなんか…不思議だよ 」
「 そう、なの?」
裕翔「 うん…俺ってやっぱり孤児だから。知らない愛もあっておかしくないって思い込んでた 」
「 そっか 」
俺はこれまで、何度も振られて、泣いてきたなあ。
その度に薮が面倒くさそうにしながら家に泊めてくれたっけ。
泣くなよ、なんて優しい言葉はかけてくれないくせに、いつの間にか寝てしまった俺にブランケットをかけてくれる不器用な優しさに胸が温かくなれた。
裕翔「 だから俺の初恋は、慧さんだよ 」
…まぁ、それももう、卒業するよ。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時