32. 重なり ページ32
yt side
侑李「 お兄ちゃんたち、ばいばあい！」
( ありがとうございました )
「 ばいばーい！」
慧「 ばいばい、侑李くん！」
予想通り、施設の方が侑李くんを迎えに来られて、迷子だった彼の相手をしていたことを話すと頭を下げられ感謝された。
ただでさえ身寄りのない子供が路頭に迷うのは本当に危険らしく、必死で探していたらしい。
侑李くんとその先生と別れた俺たちは、近くにあったベンチに座り一休み。
慧「 侑李くん、可愛かったなあ…」
「 きっと将来はかなりのイケメンになるだろうね 」
慧「 ふふ。きっとそうだねぇ 」
自販機で買った、静岡の茶葉を使ってあるあったかいお茶を啜りながら目を伏せた。
慧「 ……裕翔くん、大丈夫？」
太ももに置いていた左手に、慧さんの華奢な掌が重なる。
いつもよりワントーン低くて安心する声色が、耳を、心を優しく包んだ。
ふっ、と息を吐く。
今から俺が言おうとしていることは、聞いていて気持ちのいい話ではないから。
「 慧さん、俺の話…聞いてくれる？」
いつも守ると、強気なことばかり言ってる俺が、眉を下げて恥ずかしいくらい情けない表情を浮かべているからか、慧さんが目を見開く。
だけどすぐに真面目な顔になって、重ねていた掌に力を込め、今度は握ってくれた。
慧「 聞かせて？裕翔くんのこと 」
その返事に、微笑って、目を閉じた。
もう顔なんて覚えていない。
けれど忘れることなんてできない、あの人。
「 瘡蓋なんてもう、ないんだよ……傷跡があるだけ。沁みることすらない 」
ただそこにいすわり続けてる、残像。
跡が濃く、俺を縛る。
背中は誰にも見せられない。
涼介にすら見せたこともないくらい。
「 だけど背中に手を回すたびに、声が枯れるほど叫んだあの頃を思い出す。」
忘れることなんて、許さない。
とでも言うように。
ハイヒール。酒の匂い。あの煙。
恐怖症は克服した。
けれど、細い指が持つそれだけは怖くて。
見るだけで額に汗が滲み、心配されてしまうほど。
最近は一度だけ目にしたけれど…あのときは慧さんがいたから。
「 あの時俺は一人だった。」
たまに帰ってきたと思えば、食べ物が入った袋だけを落としてく女。
「 虐待を受けてたんだ………母親から 」
慧さんの瞳から、涙がこぼれた。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し？というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…！私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました！！ (2019年12月26日 3時) (
レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください！ (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの１つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非！ (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、｢喫煙｣ではなく、｢禁煙｣ではないでしょうか…？喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…！私の勘違いでしたらごめんなさい！ (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：神楽
| 作成日時：2018年4月1日 15時
