雨宿りするなら君の胸の中で。 ytin

28. 息抜き ページ28

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「 …へ？旅行？」







何社かのパンフレットを抱え込んだ彼が、満面の笑みを浮かべて「はい！」と答えた。

俺はキョトンとしつつもそれを１つ取りペラペラめくる。




青々とした海や空、緑の爽やかなヤシの木に華やかな花々が映る表紙からしてハワイを推しているみたいだけど…裕翔くんが付箋を貼っているのは北欧の寒い地域ばかり。

そーいう波に逆らう辺りこの子はだいぶ肝が座っている。





裕翔「 俺、今まで休みとか取らないでずっと仕事してたから休みをそろそろ取ろうと思ってて。」


「 …ああ。裕翔くん真面目だもんね。想像つくよ」





「真面目も度が過ぎると疎まれるけどね」と付け足した彼は苦笑いを浮かべていた。
どうやら経験からの言葉らしい。





裕翔「 まあ、これも、慧さんが休暇取れたらの話なんだけど…どうですか？」






「 ふふ。俺も普段あんまし休み取ったりしないから承諾してもらえると思うな 」


裕翔「 じゃあ二人で息抜き旅行だ！早速ピックアップしてみるね！」


「 ふふ。うん。宜しくお願いします 」







そう笑いかければ、はにかんで、卓上にばらけていたパンフレットをかき集めた。







裕翔「 リーフレット作ってくる！」






彼は一から何かを作り出すことがとても好きだ。
生真面目から生じた完璧なプレゼンターぶりには出会ってから何度も驚かれた。

勿論プレゼンテーション力がすごいというのは大前提として、タイミングや情報の総集と解析、さらには見やすい冊子まで作ってしまう。

何をするにもきっちり。
だけどそれが終わるとふにゃふにゃになる。
オンオフがしっかり別れている彼はよく撮影後にのたれ死んてることが多い。






なんというか…うーん。

これでも一応年上の俺からしてみれば、裕翔くんはどこまでも真っ直ぐで無邪気なんだと思った。


屈託無い笑顔もストレートな言葉も。
濁すことなく彼は伝えてくれるから、安心して傍にいることができる。





薮の隣が居心地が良いのは、その反対。
全てが曖昧だったからだ。

ひかるの生存、二人の気持ち、未来。
分からないことだけなのに「大丈夫」と笑うから。






だけどこれからは違う。
自分で考えてそれを言葉にしなきゃ裕翔くんには伝わらない。

一歩踏み出す。扉を開ける。
そんな風に生きていけばいつかは、自分を許せるような気さえする。







君のおかげ、だね？裕翔くん。

ありがとう…大好きだよ。

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