雨宿りするなら君の胸の中で。 ytin

25. 傘がないときだけでいいから ページ25

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「 慧さん…」






雨でないもので濡れる頬を親指で拭った。
あなたが悲しむ俺を宥めるように微笑む。

それすら、この瞳には哀しく映った。









慧「 ……ねえ、裕翔くんは、愛してくれますか？」







雨が降る。それと同じようにあなたが泣いてしまうのなら。

夏なんて来なければいいのに。








一人でいることに孤独を感じてしまうのなら、俺があなたを離さない。傍にいるって約束する。







「 俺が慧さんを守ります 」







赤くなり涙を溜めた大きな目が俺を見つめる。
うずくまりながら見上げられて、俺よりも年上なのに子供みたいに寂しさに打ちひしがれているこの人を俺は放っておけない。







「 俺があなたの……傘になる 」







好きです。慧さん。
薮さんよりも頼りないかもしれないけど、俺はあなたじゃないとダメだ。




ゆっくりと瞬きをしたあなたが、俺の差し出した手をそっと握る。

雨の落ちる音。あなたを抱きしめた瞬間伝わる冷たさ。全てが愛おしく感じた。








「 愛します。俺の持ってるもの全部で。それでも足りないかもしれないけど、それでもずっと。あなただけを。」









寒さで震える、冷たい唇に自分のを重ねた。
雨粒に濡れているのに…甘く感じる。

それほど慧さんとの接吻は甘美だった。







慧「 んっ…ふ、っ…ん」









舌を絡め、離せば銀色の糸で繋がれる。
もう一回…もう一回、と何度も強請るように下から啄み重ねてく。それに答えるように慧さんも舌を絡め追いかけてくれるからつい嬉しくなった。






俺はこの人に比べたらまだ子供だ。
だからこそ、背伸びして、がっつかないようにって気にしながら頬に手を添わす。





今はまだ誰かの代わりでもかまわない。
そんな都合のいい恋、続くはずないって分かってるけど、これくらいの安い言葉であなたを繋ぎ止められるのならいくらだって言って見せるよ。






苦しさも、愛しさの代償だと思えばなんてことない。









「 …慧さん、俺の家に来ませんか？」






耳元で囁けば、眉を下げて「うん」と言ったあなたの手を、気づいている違和感は口にしないまま引く。









触れてしまったら、壊れてしまいそうで、








今はただ、二人の間に流れる静寂を切るような雨音を聞いていた。

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