20. 流れ星 ページ20
yt side
『 …慧さん、』
華奢な肩をやっと見つけて、隣に立った。
店先で雨宿りしてるあなたは濡れていて寒そうだったから上着を掛けてあげた。
慧『 …ごめんね。』
『 気にしないで。風邪引かれたら俺が困りますから 』
慧『 なんで、裕翔くんが困るの?』
『 だって…心配で心配で仕方なくて何も手につかなくなるよ 』
慧『 ごめんね 』
『 もう、何に対しての謝罪なの 』
あなたの隣にいたかった。
どんな笑顔も、涙も、抱きしめる覚悟さえあったんだけどなあ。
慧『 …俺、昔ね、襲われたんだ。小屋の中に押し込まれて、色んなとこ触られて。』
『 そうだったんですか…』
慧『 怖くて声も出なかった俺をね、助けてくれた奴がいたんだよ。』
綺麗な瞳が、ふっ、と濁る瞬間。
彼の闇を感じて目が逸らせなくなった。
慧『 逃げて、って。俺はいいからって。振り返っちゃ…っだめっ……ひかるっは…っ』
『 …ひかる?』
慧『 ひかる、…っ…は俺のせいで、いなくなったんだ…っ』
涙がこぼれるのと同じように、言葉をポツポツ落とす慧さんにたまらなくなった。
触れたくて、触れられなくて。どうしようもなくなって拳を握りしめた。
『 ひかるさんって…慧さんの恋人?』
慧『 …心友。よく、双子みたいって、言われてた 』
『 そっか。』
俺はそこにいたわけじゃない。
それどころか、その時の慧さんを知ってるわけでもない。
だけど、いやだからこそ、俺にしか言えないことがあるはず。
『 慧さんは、背中を押す人の気持ちを知ってる?』
蒼くて、曇った空を見上げて目を細めた。
慧さんの視線を感じる。
『 …怖いよ。人の背中を押して、自分を殺すのは。だけどね、押した人が大切なら大切な分、幸せなんだ。』
誰かの人生を変えてしまうことがある。
俺もそうだった。
( 俺、モデルになれるかな…)
自信家だけど、ネガティヴな面も持ってる彼の人生がかかってたから。言葉を濁したくもなった。懇願するような目から背けたくも。でもそうしなかったのは…
『 逃げたくても、逃げなかったのは…慧さんが大切だったからだと思います。』
自分を傷つけてでも、押したかった背中。
『 そんな想いを、あなたの足枷になんてしないで。』
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時