15. スターライト ページ15
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小さい頃から体が弱くて、同年代の子達と公園や野原で走り回ったりしたことがなかった。
保育園で外へ出ようとしたら先生に「慧くんはだめよ。」と止められていたからかもしれない。
だけどきっと、俺自身があの時、ガラスの向こう、窓の外ではしゃぐ子達に無理にでも手を伸ばそうとしなかったからなんじゃないかと今は思う。
空にかかる虹に届かない掌をかざすのは、夢を見たいからだ。
それと類似した感覚で俺は爪先で立って手を空へ伸ばした。
「 …星が、綺麗だなぁ 」
あの頃出来なかったことを、今しよう。
手を伸ばすことさえしなかった。憧れて恋焦がれるだけで身を乗り出したり手を伸ばしたり、受け身の自分から卒業しないと。
会社の帰り道、薮に最寄りまで送ってもらい徒歩数分の家を目指す途中。
あまりにも綺麗に星が輝くからつい寄り道をしてしまった。
こんな風に無邪気に、ただ星空を見上げるのなんていつぶりだろう。
センスオブワンダーをひしひしと感じながら瞳を閉じた。
夜空を見ていたのに視覚を遮った。そんな変人、きっと俺か、アイツしかいないだろうな。
「 ひかる……見えないよ 」
夜は暗くて怖くて、嫌いだった。
夕暮れに差し掛かったこと雨の日はもっと最悪だ。
あの日を思い出す。
彼の、光の生存を、俺と薮今も探してる。
十年が過ぎた。大人になった。光を置いてきてしまったまま。俺は、大人になったんだ。
悲しいのも、苦しいのも、光のはずなのにあの時涙が止まらなかった俺は薮に支えられていた。
光の悲鳴が聞こえた気がした。
不意に、耳がキーンとして涙が溢れ、叫んだ。
まるで自分の罪をかき消すように。
「 …いま、どこにいるの……」
星を1つずつ数えていけば、いつか君に会えるだろうか。
その時俺は裕翔くんと……どうなれてるかな。
今よりずっと小さな手や体で、俺たちは出会い支え合ってきた。三人いつも一緒だったよね。
貫禄のある薮、口煩い光、適当な俺。
かなり変わり者だって噂されてたの気にしてたのは光だけだったんだよなぁ。
「 あーくそ、」
ちっちゃな舌打ちをひとつ。
「 あのさ、ひかる 」
それから、精一杯の笑顔も。
「 俺、好きな人ができたよ 」
遠くにいる君に、届け。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時