マールブルグ病 ページ34
S.Mside
北斗「だから今朝の聡の姿を見て、本当にすげぇなって思ったんだよね」
聡「……え？」
予想と180度違う先輩の言葉に動揺が隠せず、思わず間抜けな声が漏れ出る
聡「違う…違います…
僕は、っ僕は何も出来なくて…」
北斗「いや、ちゃんと風磨の指示通りに動いてた
ルートだってきちんと取れてたし」
聡「ちがいます…っすごく時間を掛けてしまったし…挿管って言われて…っあたま、真っ白になったし…」
言いながら、またぼろぼろと大粒の涙が溢れた
聡「どうしても考えてしまうんです……っ…僕じゃない誰かがやってたらって…っもっと早くルート取れて、点滴落とせてたら……ショック防げたんじゃないかとか…っ、あのまま北斗先輩が代わってくれてなかったら、健人兄ちゃん…助からなかったかもって…ｸﾞｽｯ…っ怖くて、怖くて…！」
泣きじゃくる僕の頭を撫でてくれる優しい手
違う手なのに、なんだか健人兄ちゃんに撫でてもらった時のような心地よさがして、それにまた健人兄ちゃんが恋しくなって涙が止まらなくなる
北斗「それだけ怖い思いをしたのに、逃げなかったんだから聡はすごいよ。急患で運ばれてきたのが家族なんて、そんなの誰だって怖くて動けないに決まってる。だけど聡は逃げなかったし、ベストを尽くした」
聡「…っｸﾞｽｯ…」
北斗「自分では今の場所が合わないと聡は思ってるかもしれない。だけど、それだけの精神力があって、いつも学ぼうとする姿勢があるからこそ聡は救外チームの一員に選ばれたんだと俺は思ってる
聡はチームに必要な人だ。だから、やめようなんて絶対に考えるな」
聡「……っ！」
この優しくてカッコいい先輩は、どれだけ僕のことを見ていてくれるんだろうか
今までも救外が肌に合わないと感じることはあった
だけどそれを先輩に相談したことはなかったし、兄弟にすら打ち明けたことはなかった
今回処置中に北斗先輩に代われと言われた瞬間、心が完全にぽきりと折れてしまったような気がして、密かに辞める決意を一人で固めていたところで
まさか、それを北斗先輩本人に引き留めてもらえるとは思いもしなかった
北斗「今回健人先生が一命を取り留めたのは、聡が逃げなかった証拠だと俺は思う。だから次も、聡が逃げずに信じれば、きっと目を覚ましてくれるから」
聡「…っはい」
先輩の優しくも力強い声に背中を押されて
僕はもう一度健人兄ちゃんと、自分と向き合う覚悟を決めた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「家族」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫苑(プロフ) - 紗瑛さん» お返事遅くなり申し訳ございません。嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります！ (2021年8月18日 19時) (
レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 空楽さん» お返事遅くなり申し訳ございません。そのように言っていただけて光栄です！8月後半は更新頑張りますのでまた呼んでいただけますと幸いです！ (2021年8月18日 19時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紗瑛 - 更新楽しみにしています！ (2021年8月12日 21時) (レス) id: 2dcb5022ff (このIDを非表示/違反報告)
空楽 - 更新楽しみにしてます！ (2021年8月7日 1時) (レス) id: 86d36c49a2 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - SZ*青薔薇さん» いつもコメントありがとうございます！共感して頂けて嬉しいです！笑 青薔薇さんの作品もいつも楽しみにしています！これからも応援してます！ (2021年8月2日 0時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑 | 作成日時：2021年7月3日 2時
