マールブルグ病 ページ30
F.Kside
兄貴に縋り付いて泣き叫ぶ勝利とマリウス
俺もまだ受け入れ難くて、さっき止まったはずの涙がまたぽたぽたと溢れてきた
聡は処置中に涙が枯れるほど泣いたせいか、それともあまりにショックな光景を沢山目の当たりにし過ぎてしまったせいか、涙は溢さず、腫れぼったくなった目でぼんやりと兄貴の姿を眺めていた
今は脱水回避の輸液と生食、輸血、ノルアドで昇圧を図ってなんとか持ち堪えてはいるが、いつまた血圧が下がってショックを起こしてもおかしくはない
何より原因が分からないせいで、有効的な手段を選択することもできない状況なのが一番痛かった
翔「風磨!血液検査とPCRの結果出たぞ!」
風「……っ!」
駆けつけて来たのはICU専属医の櫻井翔先生
元々長年救外のリーダーを勤め上げ、今はICUの専属医として幅広い疾患に対処している、病院内でも随一の名医だ
そして、俺が研究医時代と新人時代に最もお世話になったと言っても過言ではない人物
翔「マールブルグ病だ
健人が2〜3週間ほど前に担当していた患者の中に、アフリカに渡航歴があって急死した患者がいたって、さっき脳神経外科病棟から連絡があった」
風「…っ…マールブルグ…」
翔「検査の結果全員が陰性、今回の濃厚接触者は健人しかいなくて、クラスターは免れたらしい」
風「……そうですか…」
確かにクラスターを免れたのは関係者としては幸いだ。だけど、兄貴だけがこんなことになって、良かったですねなんて口が裂けても言えるわけがなかった
翔「大丈夫だ風磨、健人を信じろ」
風「……翔先輩っ」
翔「マールブルグは確かに確立された治療法はない
だけど早期に脱水回避処置や輸血を行っていれば助かる可能性は上がると言われてる」
風「…っ」
翔「お前がちゃんと判断して脱水回避も、輸血も、昇圧剤だって搬送時から使ってるんだ。潜伏、発症期間から逆算して後2日が山場にはなるが、信じて待てばきっと助かる」
風「…ぅ、うゔ……兄貴…ッ…」
翔先輩の力強い言葉に、耐えていた涙が堰を切ったように溢れ出して止まらなくなる
治療法がない以上、信じて待つしかない
それがどんなに辛いことか、その場にいる兄弟全員が理解して涙を溢している
正直、心が壊れてしまいそうだった
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紫苑(プロフ) - 紗瑛さん» お返事遅くなり申し訳ございません。嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります! (2021年8月18日 19時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 空楽さん» お返事遅くなり申し訳ございません。そのように言っていただけて光栄です!8月後半は更新頑張りますのでまた呼んでいただけますと幸いです! (2021年8月18日 19時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紗瑛 - 更新楽しみにしています! (2021年8月12日 21時) (レス) id: 2dcb5022ff (このIDを非表示/違反報告)
空楽 - 更新楽しみにしてます! (2021年8月7日 1時) (レス) id: 86d36c49a2 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - SZ*青薔薇さん» いつもコメントありがとうございます!共感して頂けて嬉しいです!笑 青薔薇さんの作品もいつも楽しみにしています!これからも応援してます! (2021年8月2日 0時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫苑 | 作成日時:2021年7月3日 2時