【文スト】首領、１３歳になります。 ２ 【森鴎外】

第四十八話　ただいま ページ5

その後、予定通り仕事を終え、
予定通り帰国し、
予定外なことに留守中だった首領の机上に書類を置き、
多少予定通り自室に戻り、
予定通りに就寝し、
予定通りに起床した。

今頃、首領が書類に目を通していることだろう。


――いなくて良かった。


なぜかホッとしている自分に悪態をつき、
私服に着替える。

勿論、出かけるため――なんかではなく。
“あの方”に会いに行くのだ。

ポートマフィア内を歩き、部屋を見つける。


「……こんにちは」


扉をノックして中に入る。
人と話すのは得意ではないため、言葉がもたつく。


「うはははは！ 丁度いいところに来た！ 今、偶然新型原子が完成したところだ！
　だが核分裂した！ 撮りたかった！」


此方に背を向け両手を上げ、高笑いをするのは“梶井基次郎”様。
科学の腕は一番だと記憶している。


「うははっは…………はぁ。
　それで？ 何の用があって僕を？」


漸く振り向いて私の姿を見ると、
ポン、と手を打って待っててと言って室内を移動する。

要件を理解したらしい。

凄い、と思ったがよくよく考えれば此処に来るときは
九割、その用件だったことを思い出す。


「毒がきれちゃったか。 どうする？
　いつものと、さらに毒性が強いやつが手に入ったけど」
「後者でお願いします」
「でも、まだ渡したことが無いからキケ、ンー……
　まあ、君のことだから大丈夫か！」


どこだったかな、なんて何気ない台詞を鼻歌でも歌うかのように呟く。


「あ……そうだ。
　探している間に、面白い話でもしようか」


　


(尾も白い話、笑い話)

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