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第三十九話 結末 ページ41

――私の顔を見て固まってしまったAちゃん。

どこかその顔は熱に浮かされたように見える。

――決めた。


「Aちゃん。 君を許そう。
 そしてその素晴らしい腕前を
 ポートマフィアのために揮ってはくれないだろうか」


メスを懐に仕舞い、敵意が無いことを示したあとに交渉する。
相手のために先に損を支払うことは交渉の基礎だ。


「…………許して、くださるのですか」
「そう云っているだろう?」


彼女の発言に首を傾げれば、
彼女は丸い目を更に丸くする。

そして再び固まってしまったAちゃん。
目の前の出来事に困惑しつつ、ふと今日の予定を思い出す。

――確か、まだ仕事が残っていたはずだ。


「それじゃあ、私はそろそろ行くとしよう」
「も、もう行くのですか」


行かないで、と云わんばかりに捨てられた子犬のような目をする。


「仕事が残っているからねえ。 Aちゃんはゆっくりおいで。
 楽しかったよ、有難う」


久々に全身の血が滾った。

否、滾らせることができた彼女に称賛の言葉をかけ、
多少の罪悪感を感じつつ身を翻す。

靴と布の擦れる音だけが薄暗いホール内に反響する。
流れるように昇降機(エレベーター)のボタンを押して上の階へ上がる。

ふと、彼女を見れば。


――伏せ目で沈んだ顔に、鬢の毛が解けてかかっている、その美しく、いじらしい姿。


私から目を逸らそうとしない。
そこまで、私に執着を。

一途な思いを抱いてくれているのか。

私は親の仇故、仕方の無いことなのだろう。
だがその目が、視線が。

“自分を負かし、情けを掛けられた故に一目置く”

という目ではなく。

“好きな人に向ける視線”

であれば、どれ程嬉しいだろう。


――きっと、そんなことは起き無いのだろうけれど。



 


(ここから終わる恋物語)

第四十話 殺≠裏→←第三十八話 結果



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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