第三十八話 結果 ページ40
「私の勝ち、かな」
顔を上げれば、目の前にはメス。
屈みながら突きつける鴎外は
悪戯が成功した子供の様に無邪気な笑顔だった。
先程の不可解な出来事といい、不気味なその顔といい。
彼はまだ“奥の手”を隠し持っているのだろう。
「それにしても、君……厭。
Aちゃんも、中々に強かったねえ。
殺すのが惜しい位だ」
そう言って、ペチペチと首をメスでやんわりと叩く。
――“強かった”?
――負けたのに?
その言葉は強者が弱者にかける其れだった。
――強い。
――強い、強い。
――この人に、勝てない。
圧倒的敗北。
嗚呼、私は、この人に負けたのだ。
嗚呼、私は、この人が
好きだ。
――人は、支配されたがっている。
このご時世、特に顕著だ。
はみ出すことを許されなかった戦時。
それは今でも爪痕を残す。
いや、もっと前からそれはあったのかもしれない。
閑話休題。だから人は“間違えること”を良しとしない。
正しい答えのみを、“迷う”楽しみも知らず求める。
だから、何か問題にぶつかったときに何をして良いのかが分からない。
故に、支配されることを望む。
例え、それが所有物だという意味でも。
誰が自分の所有物を大切にしないだろうか。
それを知っているから、物なりに朽ちるその時まで愛を求める。
そして、その支配し、導いてくれる強き者に皆惹かれる。
だからこそ、暴動などが起きる。
例え、暴君と立場を交換といえども
人々の上に立つことが心地の良い悦を生むと知っているから。
それが、別の者を虐げるとは知らず。
結局は、自分勝手なのだ。
勝手に従い、裏切り、惚れるのだ。
――ただ、私もその中の一人だったと言うだけ。
“首領”の勝手に強さに惹かれ、惚れたのだ。
一方的な恋と知っていても。
(ここから始まる悲恋物語)
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蒼(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時