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第三十五話 仇討ち ページ37

親が死んだ。
“森鷗外”の手によって。

だから、私は生きた。
復讐するために。

そして、その思いのみを胸に抱えて、幾何の月日が経った。

――命なりけり小夜の中山。
盲亀の浮木、優曇華の花待ちたること如しとはよく言ったモノだ。

上手く、森鷗外をポートマフィアの地下内にある
円形のホールに誘い出せた。

――勿論、報復のため。

とはいっても、彼が信頼している人の筆跡を真似して

――“一対一で話したい”

と手紙を送ったのだから、来るのは当然と言えば当然なのだが。

彼よりも一足先に地下へ続くエレベーターに乗り、
まるで小さな劇場を彷彿とさせる造りのするその空間へ足を踏み入れる。

中には何もなく、照明も点いていない。
只々、自分の踏み入れた時の足音だけが反響する。

――力強く、柄を握る。

ここが、森鴎外の墓場となる。
否、させる。

復讐の決心の元、素早くエレベーターの脇に構える。

そして、手紙に書いた予定の時刻に
エレベーターが仰々しいモーター音が響き渡らせ、ゆっくりと上昇していく。

この場所は、滅多に人の出入りが無い。
即ち、次にエレベーターが降りてきた時が、彼が降りてくる時。

構え直した親の遺品である短刀の、鋭い真剣の光がきらりと輝く。

ガタン――という音と共にモーター音が止み、
誰かがこの空間に足を踏み入れる。


「…………誰かいるのかね?」


カツン、カツンとゆっくりとした足取りがホールの真ん中まで移動する。
暗闇でも分かる、あの風格。

それは、間違えるまでもなく、仇の姿。


――嗚呼、あゝ、我が復讐すべき敵。


「斬り捨て御免ッ!!」


――私は、地を、蹴った。


 


(今宵の立会)

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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